公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.53解説

 問 題     

国際協力等の活動に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.国際連合の平和維持活動(PKO)は,国連憲章が予定した国連軍が創設されない中,停戦合意の遵守を監視する役割などを遂行するために開始された。冷戦後には暫定統治や武装解除などの多角的な活動を行うようになった。

2.各国の間の経済格差を背景にして,途上国に対して国際的な支援を行う開発援助は,19 世紀後半に発展した。当初の開発援助は,国民総生産の増大につながる経済成長の促進ではなく人間開発を目標にしていたが,現在はより広範な活動が行われている。

3.人道的危機に対応する人道援助活動は,難民支援,食糧援助,医療援助などの活動を通じて行われている。第二次世界大戦後,国連設立と同時に設置された国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は,難民の権利保護,本国への強制送還,緊急時の物的援助等を行っている。

4.人権問題への対応は,国際社会の大きな取組の一つである。国連憲章上の国連の主要機関である国際刑事裁判所(ICC)は,広く人権一般に対する罪を犯した個人を処罰する機関であり,国際社会が協力して人権に対する犯罪の不処罰を許さないことで,犯罪防止に貢献している。

5.政府開発援助(ODA)は,国家と国家の間で行われる二国間援助であり,国際機関に対する拠出や出資を含まない。ODA の主たる目的については,開発援助委員会(DAC)により,途上国の経済開発や福祉の向上,軍事的な支援等とされている。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
国際連合の平和維持活動(PKO) に関する記述です。

選択肢 2 ですが
開発援助が発展したのは、19 世紀後半ではなく 20 世紀後半と考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
国連難民高等弁務官事務所が、本国への強制送還を行っている、という記述はおかしいと判断できるのではないでしょうか。ちなみに、難民を迫害が予想される地域に追いやってはならないという国際法上の原則が「ノン・ルフルマン原則」です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
国際刑事裁判所(ICC) は、ジェノサイド罪などの特定の犯罪を扱います。「広く人権一般に対する罪を犯した個人を処罰する機関」ではありません。国際関心事である重大な犯罪について責任ある個人を訴追・処罰すること、及び、将来において同様の犯罪が繰り返されることを防止することが目的である機関です。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ODA には、開発途上国・地域を直接支援する二国間援助と、国際機関に対する拠出である多国間援助があります。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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