公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.19解説

 問 題     

取消訴訟の判決に関する ア~オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.取消訴訟については,処分又は裁決が違法ではあるが,当該処分又は裁決を取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において,原告の受ける損害の程度,その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上,処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは,裁判所は請求を棄却することができる。ただし,裁判所は,当該判決の主文において,処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。

イ.いわゆる事情判決が行われた場合について,行政事件訴訟特例法においては,原告による損害賠償の請求を妨げない旨の定めがあったが,現行の行政事件訴訟法においては,特別の定めはしておらず,損害賠償の請求は認められていない。

ウ.処分又は裁決を取り消す判決が第三者に対して効力を有することとなると,自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができず,判決に影響を及ぼすべき攻撃又は防御の方法を提出することができなかった第三者の権利義務を侵害することとなるため,行政事件訴訟法は判決のこのような効力を否定している。

エ.申請に基づいてした処分が,手続に違法があることを理由として判決により取り消されたときは,その処分をした行政庁は,判決の趣旨に従い,改めて申請に対する処分をしなければならない。

オ.土地課税台帳等に登録された基準年度の土地の価格についての審査決定の取消訴訟において,裁判所は,審理の結果,基準年度に係る賦課期日における当該土地の適正な時価等を認定し,固定資産評価審査委員会の認定した価格がその適正な時価等を上回っていることを理由として審査決定を取り消す場合には,納税者がその一部の取消しを求めているときであっても,当該審査決定の全部を取り消す必要があるとするのが判例である。

1.ア,ウ
2.ア,エ
3.イ,エ
4.イ,オ
5.ウ,オ

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
行政事件訴訟法 31 条による事情判決に関する記述です。

記述 イ ですが
事情判決により請求棄却された原告が、別途国家賠償請求を提起するケースがありえます。この際、事情判決の主文で違法宣言されているため、違法性は通常肯定されます。また、裁判途中で中間違法宣言判決を行う制度があり、これをふまえ、行政側が損害賠償等の措置を行うことを前提として事情判決をするという手続きの流れも想定されています。記述 イ は誤りです。

記述 ウ ですが
行政事件訴訟法 32 条 1 項によれば、処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有します。記述 ウ は誤りです。

記述 エ は妥当です。

記述 オ ですが
最判 H17.7.11 によれば、固定資産評価審査委員会の認定した価格が、その適正な時価等を上回っていることを理由として審査決定を取り消す場合には、同決定のうち上記の適正な時価等を超える部分を取り消せば足ります。全部を取り消す必要があるわけではありません。記述 オ は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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