R4年 水質有害物質特論 問6 問題と解説

 問 題     

ほう素及びふっ素排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. ほう素排水は、pHを9以上にして、アルミニウム塩と水酸化カルシウムを併用して凝集沈殿処理できる。
  2. ほう素排水をN‒メチルグルカミン形イオン交換樹脂で処理するとき、樹脂の再生は高濃度の塩化ナトリウム水溶液で行う。
  3. ふっ素排水をふっ化カルシウム法で処理するとき、処理対象がふっ素のみである場合、最適pHは7付近である。
  4. ふっ素排水の高度処理法としては、アルミニウム塩を添加して水酸化アルミニウムのフロックを生成させ、これにふっ化物イオンを吸着・共沈させる方法がある。
  5. ふっ素選択吸着樹脂として、交換基に含水酸化セリウムをもつものがある。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

(1)は正しいです。ほう素排水の凝集沈殿処理といえば、「アルミニウム塩と水酸化カルシウムの併用法」です。アルミニウム塩として使われるのは硫酸バンド(硫酸アルミニウム)であり、問題によっては「硫酸バンド」という名称で出題されることもあります。

(2)が誤りです。前半の記述は正しく、ほう素吸着塔に使われるのは「N‒メチルグルカミン形イオン交換樹脂」です。まずはこれを重要事項として押さえておいてください。

このイオン交換樹脂が飽和してきた場合には、硫酸溶液を使えばキレート樹脂の再生とほう素の回収を行うことができます。よって、(2)の後半にある「高濃度の塩化ナトリウム水溶液」が誤りで、正しくは「硫酸」となります。

(3)は正しいです。ふっ化カルシウムは酸性でもアルカリ性でも溶けやすい一方、中性付近だと沈殿しやすいという特徴があります。よって、処理対象がふっ素のみである場合、最適pHは7付近となります。

(4)も正しいです。(3)のふっ化カルシウム法はふっ素除去の有用な処理方法のひとつですが、これだけではふっ素濃度が10~20mg/L程度までしか下がりません。これは、生成したふっ化カルシウムがわずかに水に溶けることや、コロイドを形成して浮いてしまう(=沈殿しにくくなる)ためです。

よって、基準値が厳しい地域では、高度処理としてアルミニウム塩を添加して水酸化アルミニウムのフロックを生成させ、これにふっ化物イオンを吸着・共沈させる方法(水酸化物共沈法)が用いられます。

(5)はややマイナーですが、正しい記述です。ふっ素の選択吸着樹脂として用いられるのは、希土類水酸化物を交換体とした樹脂です(ここまでは重要事項)。セリウムも希土類元素なので、「交換基に含水酸化セリウムをもつものがある」といえます。

以上から、正解は(2)です。

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