問 題
水銀排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 鉄塩を併用しない硫化物法だけでは、排水基準以下に安定処理することは困難である。
- 硫化物法においては、S2-が過剰となることによる再溶解の問題がある。
- 活性炭を用いて吸着処理する場合、アルカリ性よりも酸性の方が吸着効果がよい。
- 水銀専用キレート樹脂として、ジチオカルバミド酸基やチオ尿素基を配位基としてもつものがある。
- 有機水銀化合物を塩素によって塩化水銀(Ⅱ)に分解するとき、アルキル基の炭素数が大きいほど分解しにくい。
解 説
(1)と(2)は硫化物法に関する記述です。問2と問3に続いて、3問連続で硫化物法が出題されたことになります。そのため似たような解説のくり返しになってしまいますが、改めて硫化物法についてまとめます。
硫化物法は、硫化物イオンと重金属イオンを反応させて不溶性の硫化物を生成させ、これを沈殿分離する方法です。これは重金属の硫化物の溶解度が低いことを利用した方法であり、pH中性領域での処理が可能という特徴があります。
ただし、硫化ナトリウム過剰存在下では再溶解することによって目的の硫化物が生成しづらいので、鉄塩を併用するのが一般的です。鉄塩を併用することで、共沈の効果によって目的の重金属(カドミウムや水銀など)が沈殿しやすくなります。
以上から、(1)と(2)は両方とも正しい記述です。
(3)について、活性炭による吸着法では、pHは1~6の酸性で水銀の吸着効率が高くなります。よって、これは正しい記述です。
(4)に関して、水銀用のキレート樹脂として使われるのは、硫黄系の官能基を有するものが多いです。具体的には「ジチオカルバミド酸基」や「チオ尿素基」を配位基としてもつものが挙げられるので、(4)も正しい記述です。
もしこれらの名称を覚えるのが大変だと感じる場合には、硫黄を意味する「チオ」という部分だけでも押さえておいてください。
(5)で、塩素による塩化水銀(Ⅱ)への分解は、有機水銀化合物のアルキル基の種類によって難易度が変わり、アルキル基の炭素数が小さいほど分解しにくいです。実際、公害病である水俣病の主な原因物質は、炭素数が最も少ない(1つ)のメチル水銀でした。
よって、(5)の記述が誤りなので、正解は(5)となります。
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