R4年 水質有害物質特論 問2 問題と解説

 問 題     

重金属排水の処理技術に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 重金属排水は一般に酸性であり、凝集沈殿法で処理するためには、アルカリ剤によるpH調整が必要である。
  2. 共沈処理は、共沈剤を添加しない凝集沈殿法に比べ、重金属を微量まで処理できる効果的な技術である。
  3. キレート剤を含む排水の処理では、キレート剤の濃度が低くなるように、濃厚液の分別が重要となる。
  4. 硫化物法は、pH中性領域での処理が可能など優れた面があるが、硫化水素の毒性、臭気性、腐食性のため排水処理に適用されている例は少ない。
  5. 鉄(Ⅱ)イオンのほかに複数の重金属が共存するとマグネタイトは生成しないため、フェライト法は各種重金属を含む排水の一括処理には適用できない。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

(1)は正しいです。多くの金属はアルカリ条件下で不溶性の水酸化物となり、沈殿します。よって、アルカリ剤によるpH調整が必要が必要です。

(2)も正しいです。塩化鉄(Ⅲ)は優れた凝集剤であり、カドミウムや鉛やその他の重金属と共沈処理すると、その重金属を効率よく処理できます。

(3)も正しいです。排水にキレート剤が含まれていると、重金属がキレート剤で封鎖された状態となり、重金属の処理が難しくなる場合があります。よって、キレート剤の濃度が低くなるように濃厚液を分別できるかが、重金属排水の処理の鍵となります。

(4)も正しいです。硫化物法は、硫化物イオンと重金属イオンを反応させて不溶性の硫化物を生成させ、これを沈殿分離する方法です。これは重金属の硫化物の溶解度が低いことを利用した方法であり、pH中性領域での処理が可能という特徴があります。

(5)が誤りです。重金属を含む排水中に鉄(Ⅱ)イオンを適当量加え、アルカリを添加後、60℃以上に加熱すると、重金属イオンを含む強磁性マグネタイトの結晶が生成し、分離回収されます。このような排水処理の方法をフェライト法といいます。

つまり、複数の重金属が共存していてもフェライト法は成立します。むしろ、各種重金属を含む排水の一括処理に使えることがフェライト法の大きな強みといえます。

よって、(5)の「~生成しないため、~適用できない。」というのが誤りです。

以上から、正解は(5)となります。

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