H29年 水質有害物質特論 問14 問題と解説

水素化合物発生原子吸光法によるセレンの検定に関する次の記述中、(ア)~(ウ)の中に挿入すべき語句の組合せとして、正しいものはどれか。

試料を( ア )と硝酸で加熱(乾固直前まで)して有機物を分解した後、約6mol/Lの( イ )酸性とし、90~100℃で10分間加熱してセレン(Ⅵ)をセレン(Ⅳ)に還元する。

放冷後、連続式水素化合物発生装置に、この溶液、テトラヒドロほう酸ナトリウム及び塩酸を定量ポンプで送入し、発生したセレン化水素を( ウ )-アルゴンフレームに導き、波長196.0nmの吸光度を測定し、セレンを定量する。

  (ア)    (イ)   (ウ)

  1. 硫酸    硝酸  アセチレン
  2. 硫酸    塩酸  水素
  3. 塩酸    硝酸  アセチレン
  4. 塩酸    硫酸  水素
  5. 過塩素酸  塩酸  アセチレン

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

水素化合物発生原子吸光法の手順はたびたび出題されています。全体の流れとともに、試薬の名前なども正確に覚えておいたほうが良さそうです。ただし、測定対象がセレンなのかひ素なのかなどによって少しずつ操作が異なるため、その点にも注意が必要です。以下はセレンを測定する際の水素化合物発生原子吸光法の手順です。

まず、試料を硫酸、硝酸で前処理します。これにより、測定の妨害物質となり得る有機物の分解などが行われます。

続いて、前処理後の試料溶液を塩酸酸性とし、90~100℃で10分間加熱することで、セレン(Ⅵ)をセレン(Ⅳ)に還元します。これは、次の反応(セレン化水素にする反応)が、4価のセレンじゃないと反応しないためです。

このあと、セレン(Ⅳ)の溶液をテトラヒドロほう酸ナトリウム溶液と反応させて、セレン化水素を発生させます。

最後に、セレン化水素を水素-アルゴンフレームに導いて吸光度を測定します。

以上から、(ア)には「硫酸」、(イ)には「塩酸」、(ウ)には「水素」が入るので、(2)が正解となります。

また、ひ素を測定対象とする場合は上記のうち、前半部分に2つ違いがあります。

一つは、前処理に使う試薬がひ素測定の場合は「硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム」であるという点です。セレン測定の際には「硫酸、硝酸」なので、過マンガン酸カリウムは含まれていません。

もう一つは、還元させる方法です。ひ素(Ⅴ)からひ素(Ⅲ)へ還元させる方法は「よう化カリウムを加える」となります。セレン(Ⅵ)からセレン(Ⅳ)への還元は「塩酸酸性下、90~100℃で10分間加熱」だったので、こちらも使用する試薬が異なっています。

ひ素測定の詳しい手順については、H26問13の解説を参照してください。

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