能動輸送の特徴

能動輸送とは、担体(トランスポータ)を介した ATP を用いる物質輸送の形式です。能動輸送の特徴は、ATP を利用することで、物質を濃度勾配に逆らって輸送するという点です。この機構により、毒物の排出といった様々な機能を実現することが可能になっています。

トランスポータは、大きく2種類に分類されます。すなわち ABC(ATP-binding cassette)トランスポータと、SLC(solute carrier)トランスポータです。

ABC トランスポータは、ATP を直接用いる一次性能動輸送担体です。代表例は、p – 糖タンパク質(p-gp:p-glycoprotein)です。p-gp は、細胞膜上に存在し、細胞毒性を有する化合物などの細胞外排出を行うのが主な機能です。

SLC トランスポータは、促進拡散や二次性能動輸送担体です。代表例は、SGLT1(sodium-glucose cotransporter 1)や、PEPT1です。SGLT1は、小腸上皮粘膜細胞におけるグルコース吸収に関与するトランスポータです。Na+ 濃度勾配を利用した二次性能動輸送により、グルコース吸収を行います。

PEPT1 は、SGLT1 と同様に小腸上皮細胞において発現している、H+ 濃度勾配を利用したジペプチドやトリペプチドの吸収に関与するトランスポータです。このトランスポータは、基質認識性が比較的広範であり、β-ラクタム系の抗生物質なども認識して輸送することが特徴として知られています。

ちなみに、ジペプチドやトリペプチドではなく、アミノ酸に関しては、アミノ酸トランスポーターが別に存在します。こちらは Na+ 勾配を利用することによりアミノ酸を輸送します。(脇道の話題ですが、アミノ酸トランスポーターは、分子標的創薬の1つのターゲットとして研究が進んでいます。すなわち、アミノ酸トランスポーターの1種である LAT と呼ばれるトランスポーターは、LAT1 と LAT2 があり、がん細胞においてのみ LAT1 が高発現していることがわかっています。

そこで、LAT1 を阻害するような物質を投与することにより、正常細胞に影響を与えることなくがん細胞へのアミノ酸の吸収を阻害し、細胞増殖を阻害することができるというメカニズムに基づき現在研究中です。2013.4月時点)

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