代表的な全身麻酔薬

全身麻酔薬とは、痛みを除去し、意識消失を伴い、骨格筋を弛緩させ、各種反射を消失させる薬です。これにより外科的手術が容易になります。

感覚に着目すると、全身麻酔により温痛覚→触覚→圧覚の順で感覚が失われていきます。麻酔の経過は、第1期~第4期に分類されます。

第1期は、痛覚が消失します。導入期と呼ばれます。

第2期は、みかけ上の興奮が見られます。発揚期と呼ばれます。みかけ上の興奮とは、例えば不規則な、荒い呼吸です。これは抑制系が、麻酔により抑制されることが原因とされています。抑制系の抑制は、脱抑制と呼ばれます。

第3期は、脊髄まで麻酔が作用し、骨格筋弛緩がおきます。別名手術期とよばれます。

第4期は、中毒期です。延髄にまで麻酔が作用してしまうことにより、生命維持に必要な機能である呼吸などが維持できなくなります。

全身麻酔薬は、大きく2つに分類されます。

   ⅰ.吸入麻酔薬 (気体)
   ⅱ.静脈麻酔薬 (液体)

ⅰ.吸入麻酔薬

代表的な吸入麻酔薬は
 ・ハロタン(フローセン)
 ・イソフルラン(フォーレン)
 ・セボフルラン(セボフレン)
 ・N2O などが挙げられます。
( )の中に書いたのは、商品名の一例です。また、N2O は亜酸化窒素 ですが、笑気とも呼ばれます。

ハロタンは、不整脈誘発をしやすいという性質があります。これは、心筋のカテコラミンに対する感受性増大作用が強いためです。つまり、ハロタンを使う → カテコラミン感受性増大 → アドレナリンが大量に出ているのと類似した状態 → 不整脈という流れになります。又、肝障害をおこすことがあります。

この点を改良したのが◯◯フルラン(イソフルラン、セボフルラン)です。副作用が少なくなっています。又、◯◯フルランはハロタンより麻酔導入が速やかです。

亜酸化窒素の特徴は、血液/ガス分配係数が小さいことです。血液/ガス分配係数が小さいというのは、血があっという間に麻酔ガスで飽和するという意味です。そのため、吸入開始→すぐ血液に麻酔ガスが飽和→すぐ中枢に作用するといえます。つまり、血液/ガス分配係数が小さければ、麻酔の導入が速やかに行うことができます。

ⅱ.静脈麻酔薬

代表的な静脈麻酔薬は
   ・ チオペンタール(ラボナール)
   ・ プロポフォール(ディプリバン)
   ・ ドロペリドール・フェンタニル(タラモナール)
   ・ ケタミン(ケタラール10) などが挙げられます。

チオペンタールの特徴は、ヒスタミン遊離作用があることです。このため喘息患者には禁忌となります。又、作用時間が短い麻酔薬です。これは他の脂肪組織に速やかに再配分されるためです。

プロポフォールの特徴は、非ベンゾジアゼピン系であることです。また、作用時間が超短時間です。これは肝臓で速やかに代謝されることが原因です。見た目は、アンプルに入った白い薬です。GABAA 受容体機能亢進により麻酔作用を示します。

ドロペリドール・フェンタニルの特徴は、意識を残した麻酔に用いられることです。

ケタミンの特徴は、NMDA 受容体拮抗薬であることです。ドロペリドール・フェンタニルと同様に、意識を残した麻酔を目的として用いられます。

代表的な全身麻酔薬をまとめると、以下の表のようになります。

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