旋光度測定と比旋光度

偏光

光(自然光)は波のように振動しながら直進します。

その振動は直進している軸と垂直の向きですが、その方向は縦方向の振動だったり横方向の振動だったり、斜め方向の振動だったり様々です。より正確にいえば、自然光はあらゆる方向に振動している無数の光が合わさっている状態です。

ここで、偏光板という特定の1方向に振動する光だけを通す板を用意します。この偏光板に自然光を当てると、偏光板によって無数の光のうちほとんどが遮断され、偏光板を通過できる光はある1方向のみの光となります。

このように、あらゆる振動方向を持つ無数の光の束から、1つの振動方向の光だけを取り出すことを、偏光といいます。

また、偏光の振動方向と光の進行方向から成る面のことを偏光面といいます。

旋光度

キラルな化合物の溶液に対して偏光を当てると、偏光面がいくらか傾くという特徴があります。このように偏光面を回転させることを旋光といい、この性質をもつ化合物(=キラルな化合物)を光学活性物質と呼びます。

また、観測者が光源を見たときに偏光面を右(時計回り)に回転させる性質を右旋性といい、左(反時計回り)に回転させる性質を左旋性といいます。そして、この回転角度のことを旋光度といいます。

右旋性か左旋性か、また、どのくらいの旋光度をとるかは化合物によって様々ですが、エナンチオマー同士の2つの化合物で比較した場合、一方のエナンチオマーがある旋光度の右旋性だったら、他方のエナンチオマーは同じ旋光度の左旋性となります。

右旋性の化合物は「+」で表したり、dextro-rotaryの頭文字をとって「d」で表したりすることができ、グルコースなら、「(+)-グルコース」や「d-グルコース」といった表記になります。

一方、左旋性の化合物は「-」で表したり、levo-rotaryの頭文字をとって「l」で表したりすることができ、グルコースなら、「(-)-グルコース」や「l-グルコース」といった表記になります。

d-、l-の表記は、いわゆるDL表記法とは関係がありません。
大文字のD-、L-の表記は旋光度で決まっているわけではないので、混同しないように注意してください。というより、混同を避けるために最近ではd-、l-表示を使うよりも(+)-、(-)-を使うことのほうが多いように感じます。

比旋光度

旋光度の説明は以上の通りですが、旋光度はその化合物で固有の値はとらず、以下の要因のすべてに依存します。

  • 化合物の種類(構造)
  • 溶液の濃度
  • 溶液の温度
  • 溶媒の種類
  • 試料セルの長さ
  • 光の波長

逆にいうと、化合物の種類(構造)以外の値を固定してしまえば、物質ごとに固有の旋光度を得ることができます。

そこで、上記の2~6番目の値を以下のように基準として定めたときの旋光度を特に比旋光度 [α] と呼び、そうすることで、比旋光度を(沸点や比重などと同じように)物質固有の値として扱うことができます。

  • 溶液の濃度:1 [g/mL]
  • 溶液の温度:20 [℃]
  • 溶媒の種類:水
  • 試料セルの長さ:100 [mm]
  • 光の波長:ナトリウム D線(波長は589 [nm])

以上のことを式にまとめると、次のようになります。

  • [α]:比旋光度
  • α:旋光度(実測) [°]
  • l:試料セルの長さ [mm](上記の通り、100mmであることが多い)
  • c:溶液の濃度 [g/mL]

また、稀に温度や光の波長を変えて測定することもありますが、そのような際には比旋光度の記号の右上に温度、右下に波長を記入して、次のように表すこともできます。

  • t:溶液の温度 [℃](何も書いてないときは20℃)
  • λ:光の波長(何も書いてないときはナトリウム D線、589nm)

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