NMRスペクトルの概要と測定法のページにてNMR法の大まかな原理について説明しましたが、13C-NMRで実際に測定すると以下のようなスペクトルが得られます。
これは酢酸エチル(CH3COOCH2CH3)の13C-NMRスペクトルです。
基準線として用いるテトラメチルシラン(TMS)のシグナルと溶媒のシグナルのほかに4つのシグナルがありますが、これらが酢酸エチルの4つの炭素に対応しています。
1H-NMRのときは、そのスペクトルから化学シフトや積分値、カップリングといった構造決定に役立つ多くの情報を得ることができましたが、13C-NMRスペクトルでは、基本的には化学シフトのみしかわかりません。
よって、化学シフトから、「このシグナルはハロゲンと結合した炭素だな」とか「カルボン酸の炭素だな」とかはわかりますが、積分値がないので「等価な炭素が2Cある」といったことはわからず、また、炭素同士のカップリングもないので、第何級炭素であるといった情報を読み取ることはできません。
(ただし、オフレゾナンスデカップリング法やDEPT法という測定方法を使えば、13Cと1Hとのカップリングを知ることができるので、第何級炭素かがわかりますが、ややアドバンスな知識となるのでここでは割愛します。興味があれば、ぜひご自分で調べて勉強してみてください。)
覚えておきたい特徴的な化学シフトの一覧を以下に記載しますので、これらはできる限り覚えておくと良いと思います。ただし、これらの数字はあくまで目安です。構造式全体の状況次第で多少値が左右することもあります。
また、下表を見てもわかる通り、13C-NMRスペクトルの化学シフトは1H-NMRほどには特徴的でなく、異なる置換基でも重なる部分が多いことから、このスペクトルだけで化合物の構造を知るのは難しいです。
これ単独ではなく、1H-NMRスペクトルやほかのスペクトルと組み合わせることで構造決定に役立つと考えてください。
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