カルボン酸誘導体の種類
カルボン酸誘導体は、カルボン酸の-OH が別の置換基に変わったものです。前項でカルボン酸の反応について扱いましたが、それら反応によって得られた酸無水物やエステルなどが、カルボン酸誘導体に当たります。
覚えておくべきカルボン酸誘導体は、以下の4種類です。
また、上図の酸塩化物については、Cl を X(ハロゲン)に置き換えて「酸ハロゲン化物」という表現をすることもありますが、主に Cl が使われるので、こう表記しています。
これらカルボン酸誘導体はどれも、アシル基(RCO-)を有しています。そのため、カルボン酸誘導体のことをアシル化合物ともいいます(教科書によってまちまちです)。
カルボン酸誘導体の反応性
カルボン酸の反応については次の項で詳しく扱いますが、多くの反応が、以下に示す求核置換反応です。
ここで、上図の L– で示したものが脱離基であり、カルボン酸誘導体のアシル基以外の部分です。Nu– は求核剤で、この求核剤の種類によって様々な反応に細分されます。そのあたりについては次項で詳解します。
この反応は、まず最初に付加反応が起こり、続いて脱離反応が起きることで、結果として置換反応が完結します。
この項で扱いたい重要なことは、基質(カルボン酸誘導体)の種類によって、この反応の反応性が異なるということです。その反応性の大小は以下のとおりです。
これは脱離基の安定性に依存します。上の反応式では脱離基がL–で示されていますが、この脱離基が安定であるということはそれだけ脱離しやすく、ひいては反応が進みやすいということです。
上にある反応性の大小関係の図から、脱離基の安定性の大小は
- Cl– > RCOO– > RO– > RNH–
であるとわかりますが、これを覚えるのが難しい場合は、対応する酸の強さに着目してください。
Cl–, RCOO–, RO–, RNH– に対応する酸はそれぞれ HCl, RCOOH, ROH, RNH2 であり、これは酸の強い順になっています。対応する酸が強いほど、その脱離基の脱離能(脱離しやすさ)が高いと覚えておくとよいと思います。
次項では、この求核置換反応についてより詳しく解説していきます。
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