この項では芳香族化合物の反応のうち、置換反応(求電子置換反応・求核置換反応)以外の反応について説明します。代表的なものとして、還元反応として接触水素化と Birch 還元を、酸化反応としてベンジル位での酸化を挙げます。
接触水素化
アルケンの接触水素化についてはアルケンの付加反応(syn付加)のページで説明していますが、ベンゼン環でも同様の反応を起こすことができます。つまり、ベンゼンに水素が付加(=還元)してシクロヘキサンが生成します。
ただし、そもそも芳香族化合物はその安定性から付加反応が起こりづらい(置換反応が起こりやすい)という話でした。よって、アルケンの時のように Pd や Pt 触媒を使って常温・常圧で反応させても反応が進行しません。
Pt 触媒を用いて高温・高圧にすることで還元反応が進行します。
Birch(バーチ)還元
Birch 還元についてはアルキンの反応(水素化)のページで説明していますので、その反応機構など、必要であれば参照してみてください。
液体アンモニア中で芳香族化合物と金属ナトリウムまたは金属リチウムを反応させると、1 分子の水素が付加してジエン(1,4-シクロヘキサジエン)が生成します。
上に示した 2 つの例では還元された位置が異なりますが、これは置換基が活性化基か不活性化基かで決まります。
活性化基の場合は置換基のある炭素の隣とその向かいの炭素に水素が付加し、不活性化基の場合は置換基のある炭素自身とその向かいの炭素に水素が付加します。
(活性化基、不活性化基については反応性・配向性に及ぼす置換基の効果のページ参照)
ベンジル位の酸化
芳香族化合物について、ベンゼン環での酸化反応というのはあまり起こりません。
過マンガン酸カリウムなどで酸化をさせようとすると、環上ではなくベンジル位(ベンゼン環の隣の炭素)が酸化し、カルボン酸が生成します。
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