アルキンの反応(水素化)

アルキンを水素化した時、その生成物は 3 種類考えられます。2 当量の水素で還元してできるアルカンと、1 当量の水素で還元してできる cis-アルケン、trans-アルケンの合計3種類です。目的物質がこれら3種類のどれかによって、反応試薬も変えなくてはなりません。

以下に各々の生成物を作るための有名な反応を記述していきます。

Pd-Cによる接触水素化

Pd-C(パラジウム-炭素)やPt-C(白金-炭素)触媒を用いた水素化反応についてはアルケンの付加反応(syn付加)のページで紹介しています。

アルキンでも同様の反応機構で水素化反応が起こりますが、1 当量が反応した時点(アルケン)で反応が止まることはありません。アルキンはアルケンを経て、アルカンにまで還元されます。

Lindlar(リンドラー)触媒による接触水素化

Lindlar 触媒とは、炭酸カルシウムに担持した Pd に対し、キノリンと酢酸鉛などを作用させ活性を減じた触媒のことです。もっと平たく言うと、Pd-C よりも活性を弱くした Pd 触媒のことです。

この Lindlar 触媒はその活性の低さから、アルキンの水素化が1段階目で止まります。

また、その反応機構は Pd-C と同様(こちらのページ参照)のため、水素が syn 付加したアルケンが生成します。

Birch(バーチ)還元

ビーチ還元と読みがちですが、バーチ還元です。液体アンモニア中でアルキンと金属ナトリウムを反応させると、水素化が起こりアルケンが生成します。

まずは以下の反応機構を確認してください。

上の反応式の通り、まず最初にアルキンに金属ナトリウムが作用し、ラジカルアニオンとなります。ここでラジカルアニオンには cis 体と trans 体の2通りがありますが、立体反発の少ない trans 体が優先します。

次に、そのアニオンがアンモニアの H を攻撃し、ビニルラジカルができます。さらにナトリウムから電子を奪ってアニオンになったのち、アンモニアの水素でプロトン化します。

このような反応機構のため、Birch 還元では trans-アルケンが生成します。


以上が、アルキンの代表的な3種の水素化でした。反応名と反応試薬、生成物の組み合わせは大事ですので、正しく覚えてください。

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