芳香族化合物・芳香族性

「芳香族」という言葉を聞くと、ベンゼン環を連想する方が多いと思います。それで概ね正しいといえますが、これをより正確に表現するとどうなるのでしょうか。

芳香族性(Hückel則)

芳香族とは環状不飽和炭化水素の一群を指し、その代表例がベンゼンです。芳香族化合物は共役系でありπ電子が非局在化しているため、これらの化合物は比較的安定しています。

また、以下の3つを全て満たすような性質を芳香族性といい、このような規則のことをHückel(ヒュッケル)則と呼びます。

  1. π電子系に含まれる電子の数が4n+2(n = 0, 1, 2, 3, …)個である
  2. 環全体が平面構造をとっている
  3. 環を構成する全原子がsp2混成軌道をとっている

上記の1. が特に重要なことですが、このような性質を持つ化合物は、π電子の非局在化により安定な化合物となります。

代表的な芳香族化合物

芳香族化合物の代表がベンゼンであることは前述の通りですが、他にも覚えていて欲しい化合物がいくつかありますので、以下に列挙していきます。これらの全てにHückel則(π電子が4n+2個)が成り立つはずなので、確認してみてください。

上記のピリジンやピロールのように、炭化水素以外でも(NやO原子を含んでいても)芳香族性を持つことができます。

また、シクロペンタジエニルアニオンやシクロヘプタトリエニルカチオンのように、イオンであってもHückel則を満たしていれば芳香族性を持っているといえます(厳密には化合物ではありませんが、芳香族性は持ちます)。

芳香族化合物の反応性

芳香族化合物は比較的安定であるという話をしましたが、それは反応性にも影響します。

アルケンでは二重結合が切れて付加反応が進行するような反応が多くありました(参考:アルケンの付加反応のページ)。しかし芳香族化合物の二重結合が切れてしまうと、芳香族性を失い、その安定性をも失ってしまいます。

そのため、芳香族化合物に関しては付加反応ではなく、芳香族性を崩さないで進行する置換反応のほうが起こりやすくなります。

次項からは芳香族化合物の置換反応について、具体的に説明していきます。

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