問 題
アミノ酸の等電点は、クロマトグラフィーや電気泳動などにおける分離挙動を決定する。表に示す三つのアミノ酸 (X、Y、Z) を、固定相として陽イオン交換樹脂、移動相として pH7 のリン酸緩衝液を用いるクロマトグラフィーによって分離した。このとき、記述 ㋐ ~ ㋓ のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
ただし、pKa1、pKa2、pKR は、それぞれ α 炭素に結合しているカルボキシ基、アミノ基、側鎖の pKa であり、それぞれの値は表に示すものとする。
㋐ クロマトグラフィーの質量分布比 (k’) が最も大きいのは、アミノ酸 Y である。
㋑ アミノ酸 X の等電点は、5.76 である。
㋒ アミノ酸 Y の等電点は、5.61 である。
㋓ アミノ酸 Z は、pH 5.89 の緩衝液中では正の電荷をもつ。
1.㋐、㋑
2.㋐、㋒
3.㋐、㋓
4.㋑、㋓
5.㋒、㋓
解 説
【等電点の基礎知識】
等電点は、正の荷電と負の荷電が等しくなる pH のことです。原則、アミノ基 (-NH2) とカルボキシル基(-COOH) の酸解離定数 pKa の平均が等電点です。
酸性アミノ酸のように、COOH が側鎖にもある場合は、等電点が酸性に寄ります。すなわち、等電点が小さくなります。塩基性アミノ酸のように、-NH2 が側鎖にもある場合は、等電点が塩基性に寄ります。
ちなみに、本問では必要ないのですが、生化学の基礎知識として、アミノ酸は構造から特定できる必要があります。A はフェニルアラニン、B はリシン、C はグルタミン酸です。
㋐ は妥当です。
X,Z は pH 7 だと等電点よりも大きい pH なので 負電荷を帯び、陽イオン交換樹脂に吸着されずに素通りすると考えられます。そのため、リシン以外の質量分布比は小さくなります。
㋑ は妥当です。
(2.20 + 9.32) ÷ 2 = 5.76 です。
㋒ ですが
側鎖に-NH2 があるため、アミノ酸 Y の等電点は (2.16 + 9.06)/2 = 5.61 よりも大きくなります。㋒ は誤りです。
㋓ ですが
側鎖に -COOH があるため、アミノ酸 Z の等電点は (2.30 + 9.47)/2 ≒ 5.89 よりも小さくなります。pH 5.89 は等電点よりも大きい pH なので、分子全体では負の電荷を有します。㋓ は誤りです。
以上より、正解は 1 です。
類題 薬剤師国家試験 106 回 問 95
https://yaku-tik.com/yakugaku/106-095/
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