国家公務員総合職(化学・生物・薬学)R2年 問55解説

 問 題     

薬物の脳内移行性に関する記述 ㋐ ~ ㋓ のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。

㋐ ビンクリスチンは、主に MRP(multidrug resistance associated protein)により脳から排泄される。

㋑ 一部の薬物は、経鼻投与後、鼻粘膜から脳へ移行する。

㋒ 血液脳関門は、有窓内皮細胞である脳毛細血管内皮細胞から構成されている。

㋓ 血液脳脊髄液関門において、毛細血管内皮細胞で構成される領域と脈絡叢上皮細胞で構成される領域の薬物透過性を比較すると、前者の方が良好である。

1.㋐、㋑
2.㋐、㋒
3.㋐、㋓
4.㋑、㋒
5.㋑、㋓

 

 

 

 

 

正解.5

 解 説     

㋐ ですが
MRP で排泄される抗がん薬としては、アントラサイクリンなどが知られています。ビンクリスチンは誤りと考えられます。

㋑ は妥当です。
経鼻投与による脳内移行性についての記述です。

㋒ ですが
血液脳関門(Blood brain barrier = BBB と略す。)の実体は、毛細血管の内皮細胞です。通常の血管内皮細胞は有窓ですが、BBB の実体である毛細血管内皮細胞は、内皮細胞同士が密着結合で連結しています。「有窓内皮細胞」ではありません。㋒ は誤りです。

㋓ は妥当です。
血液脳脊髄液関門(Blood-cerebrospinal fluid barrier = BCSFB と略す。)の実体は、脈絡叢の上皮細胞です。脈絡叢付近の毛細血管は、脳の毛細血管ほど、内皮細胞ががっちり結合しておらず物質はある程度漏れるが、脈絡叢の方の上皮細胞が余計な物を入れないようがっちりしている、というイメージです。


以上より、正解は 5 です。

参考 薬物の脳への移行
https://yaku-tik.com/yakugaku/yz-2-2-2/

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