国家公務員総合職(化学・生物・薬学)R1年 問93解説

 問 題     

放射線の線質に関する記述 ㋐~㋓ のうち妥当なもののみを挙げているのはどれか。

㋐ 放射線の LET(線エネルギー付与)は放射線の線質を表す指標で、放射線の飛程の単位長さ当たりに物質に付与するエネルギーを表す。

㋑ 高 LET 放射線は低 LET 放射線と比べて、哺乳動物の培養細胞の放射線照射後の亜致死障害(SLD)の回復、潜在的致死障害(PLD)の回復が起こりにくい。

㋒ 放射線による DNA 損傷において、DNA 二本鎖の片方の鎖が切断される一本鎖切断と両方の鎖が近接部位で切断される二本鎖切断の発生比率は、LET の高低によらず一定である。

㋓ 放射線の生体高分子に対する作用において、γ 線等の低 LET 放射線では間接作用の寄与は小さいが、α 線等の高 LET 放射線では間接作用の寄与は大きくなる。

1.㋐、㋑
2.㋐、㋒
3.㋑、㋒
4.㋑、㋓
5.㋒、㋓

 

 

 

 

 

正解.1

 解 説     

㋐ は妥当な記述です。
LET とは、放射線が媒質中を通過する際、媒質に与えるエネルギーの事です。低 LET 放射線の例は、β、γ、X線 などです。高 LET 放射線の例は、α線 です。

㋑ は妥当な記述です。
大きなダメージを受けたため、回復が起こりにくい と考えればわかりやすいと思われます。

㋒ ですが
LET が高いほど生物学的効果が大きいため、DNA の切断比率も異なると考えられます。よって、㋒ は誤りです。

㋓ ですが
高 LET では直接作用が、低 LET では、水を介した間接作用の寄与が大きくなります。よって、㋓ は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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