国家公務員総合職(化学・生物・薬学)R1年 問91解説

 問 題     

がんに関する記述㋐~㋓のうち下線部が妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

㋐ 上皮系がん細胞の周辺組織への浸潤は、正常な発生過程に見られる上皮間葉転換と類似しており、E カドヘリンの発現増加が寄与する

㋑ 大腸がんでは腫瘍の進行において多段階的に遺伝子の変異が蓄積するが、がん抑制遺伝子p53 の変異は、多くの場合、腫瘍進行のごく初期に起きる現象である

㋒ 多くのがん細胞では、細胞増殖・DNA 損傷応答等の調節に関係する複数の経路の遺伝子に、それぞれ多数の変異が蓄積する傾向がある

㋓ 多くのがん細胞では、有酸素下でも解糖系代謝が亢進することが知られており、ワールブルグ効果(Warburg Effect)と呼ばれている。

1.㋐、㋒
2.㋐、㋓
3.㋑
4.㋑、㋒
5.㋓

 

 

 

 

 

正解.5

 解 説     

㋐ ですが
代表的接着分子であるカドヘリンの発現が「減少」することで、じわっと広がったり、どっかいったりしやすくなる、というイメージです。㋐ は誤りです。

㋑ ですが
大腸がんは APC・K-ras・p53… と次第に異常が蓄積されていくモデルが、本試験時点において知られています。 「多くの場合、ごく初期」という記述は誤りと考えられます。これにより、選択肢 1 ~ 4 は誤りです。

㋒ ですが
「それぞれ」ではないと考えられます。

妥当な記述は ㋓ のみです。
以上より、正解は 5 です。

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