国家公務員総合職(化学・生物・薬学)R1年 問57解説

 問 題     

発がん性物質に関する記述 ㋐~㋓ のうち妥当なもののみを挙げているのはどれか。

㋐ たばこの煙の中には、多環芳香族炭化水素類やニトロソアミン類などの発がん性物質が含まれている。多環芳香族炭化水素の一つであるベンゾ[a]ピレンは P450 によって代謝活性化され、反応性に富むエポキシドに変換される。これが DNA と結合し、がんを発生させる。

㋑ 変異原性を有する発がん性物質の検出には Ames 試験が汎用されている。これは大腸菌と枯草菌のアミノ酸要求変異株を用いて、その復帰突然変異を指標として変異原性を検出する方法である。

㋒ アフラトキシンは、アスペルギウス属のカビが産生するマイコトキシンで、複数の構造類似体が存在する。その中でアフラトキシン B1 は強い肝毒性を示し、摂取を続けることにより、肝がんを誘発する。

㋓ 国際がん研究機関(IARC)では、ヒトに対する化学物質などの発がん性を評価し、多段階に分類している。グループ4 はヒトに対して発がん性があるとされているもので、アスベスト、ベンゼン、アルコール飲料などが含まれる。

1.㋐、㋑
2.㋐、㋒
3.㋐、㋓
4.㋑、㋒
5.㋑、㋓

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

㋐ は妥当な記述です。

㋑ ですが
Ames 試験は、変異原性試験の一種です。サルモネラ属の一種である、ネズミチフス菌を用います。この試験に用いる菌は、ヒスチジンという分子を合成できない株です。そのため、育てる培地にヒスチジンがないと増殖できません。この菌を、確認する物質を加えて育てます。すると、変異原性がある物質の場合、菌が突然変異を起こし、ヒスチジン合成能を手に入れてヒスチジンなしの培地で育つようになります。つまり、肉眼で菌のコロニーが確認できたら、加えた物質には変異原性がある ということがわかる試験です。「大腸菌と枯草菌の変異株」ではありません。よって、㋑ は誤りです。

㋒ は妥当な記述です。

㋓ ですが
発がん性のグループ分類は、数字が小さいほど発がん性の証拠が強いものです。グループ4は、ヒトに対し、おそらく発がん性がない物質のグループです。よって、㋓ は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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