国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H30年 問47解説

 問 題     

心不全の治療薬と診断薬に関する記述 ㋐ 〜 ㋓ のうち妥当なもののみを挙げているのはどれか。

㋐ 脳(性)ナトリウム利尿ペプチドは、うっ血性心不全の患者でその血中濃度が上昇することから,心不全の診断薬に利用される。

㋑ ジゴキシンは、Na+/K+ ー ATPase を阻害し、細胞内のカルシウム濃度が上昇して、トロポニンのカルシウム感受性を増大させ、強心作用を示す。

㋒ ジルチアゼムは、L 型カルシウムチャネルを阻害し、血管の拡張作用を有する。心機能抑制作用があるので、刺激伝導障害のある患者には禁忌である。

㋓ b 受容体刺激薬であるカルベジロールを心不全患者に投与する場合、少量から投与を開始して用量を増加する。長期投与により徐々に心機能を改善する。

1.㋐、㋑
2.㋐、㋒
3.㋐、㋓
4.㋑、㋒
5.㋒、㋓

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

㋐ は妥当な記述です。
脳(性)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、長時間心臓に負担がかかった時、主に心室から分泌されるホルモンです。

㋑ ですが
「トロポニンのカルシウム感受性を増大させる」という部分のみ不要です。他は正しい記述です。Na+ 細胞内濃度上昇 → Na+/Ca2+ 交換系を抑制 → 細胞内カルシウム濃度上昇 という流れです。よって、㋑ は誤りです。

㋒ は妥当な記述です。
ジルチアゼムの心刺激生成抑制作用,心伝導抑制作用が過度にあらわれるおそれがあるとして禁忌です。

㋓ ですが
カルベジロールは、α、β 「遮断薬」です。「刺激薬」ではありません。よって、㋓ は誤りです。その他の記述は正しいです。カルベジロール(アーチスト)は、高血圧、心不全それぞれに対する用法・用量が大きく異なり、注意が必要な薬です。心不全患者に対しては、少量で忍容性を確認しつつ増量して用います。

以上より、正解は 2 です。

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