国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H28年 問39解説

 問 題     

気体の溶解に関する次の記述の ㋐、㋑、㋒ に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

「ある混合気体中の微量成分A が定常状態で水に溶解している過程を考える。成分A の物質量流束 NA は、流体本体と気液界面の濃度差を移動の推進力として
NA = kx(xAi – xA)= ky (yA – yAA) で表される。ここで、kx、ky は、それぞれ液相及び気相の物質移動係数、xA、yA はそれぞれ液相本体及び気相本体における A の濃度、xAi、yAi はそれぞれ液相側の界面及び気相側の界面における A の濃度である。

また、気液界面では平衡が成り立ち、xAi、yAi は、yAi= mxAi の関係にある。ここで、m はヘンリー定数である。平衡状態との差を移動の推進力として考えると、NA
NA = Kx(xA*ーxA)=Ky(yA – yA*)
で表される。ここで、yA* は xA と平衡状態にある気相濃度(yA*= mxA)、xA* は yA と平衡状態にある液相濃度 (xA* = yA/m) 、Ky、Kx はそれぞれ気相基準及び液相基準の総括物質移動係数である。

これらの関係より 1/Ky、1/Kx は、
1/Ky = ㋐
1/Kx = 1/mky + 1/kxとなる。

溶解度が十分小さい系では、物質移動は ㋑ 支配となる。このとき溶解速度は、気相本体の撹拌により、 ㋒。」

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

㋐ ですが
NA = Kx(xA*ーxA)=Ky(yA – yA*) の右2つの式を抜き出します。
Kx(xA*ーxA)=Ky(yA – yA*) です。ここに、xA* = yA/m、yA*= mxA を代入します。

選択肢を見れば
1/Ky = 1/ky + m/kx であれば、分母側に m をかけると、問題文に与えられている 1/Kx の右辺の形になります。よって、正解は 1 ~ 3 です。

㋑、㋒ ですが
溶解度が高い=気体がすいすい液体に入るということです。この場合、液相抵抗は問題にならないと考えられます。逆に溶解度が十分小さい系では、液相抵抗が支配的になり、このような時に気相をいくら撹拌しようと、溶解速度はほぼ変化しないと考えられます。㋑ は「液相抵抗」、㋒ は「変化しない」です。

以上より、正解は 3 です。

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