国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H28年 問25解説

 問 題     

ハロゲン化水素の分子振動に関する次の記述の㋐,㋑,㋒に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。ただし,ハロゲン化水素の分子振動は調和振動子として取り扱うものとしH は 1H,F は 19F,Cl は 35Cl とする。

「HF 及び HCl  は,それぞれ波長 2.5 nm 及び 3.3 nm の赤外線を吸収し,振動量子数 ν = 0 から ν = 1 の状態へ遷移する。HF の零点振動のエネルギーを波数単位で表すと ㋐ cm-1 となる。

調和振動子の力の定数 k は、換算質量 μ 及び振動数 f を用いて,k = 4π2f2μ と表されることから,HF の k は,HCl のものと比較して ㋑ ことが分かる。また,ν = 5 の状態の波動関数の節の数は ㋒ 個である。」

㋐ ㋑ ㋒
1. 2000  小さい  3
2. 2000  大きい  4
3. 2000  大きい  5
4. 4000  小さい  4
5. 4000  大きい  5

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

㋐ ですが
調和振動子のエネルギー固有値は E = (n+1/2)ħω
です。零点振動 のエネルギーなので n = 0 です。

赤外吸収が起こるのは、入射光と対象分子の振動数 ω が一致した時です。HF は、波長 2.5 μm の波長 を吸収しています。波長 2.5 μm であれば、1cm(=104 μm) 間に 「104 μm /2.5 μm」= 4000 波があります。これが光の持っていたエネルギー「ħω」部分に対応すると考えられるため、零点振動 のエネルギーは、これに 1/2 をかけて「2000」です。正解は 1 ~ 3 です。

㋑ ですが
まず、HF、HCl の振動数は、吸収した赤外線の振動数と同じなので、波長が 1/4 μm、1/3 μm です。同じ赤外線なので、速さが同じです。従って、波長と振動数は反比例します。振動数は 4 : 3 となります。

換算質量とは、2分子でそれぞれの質量が m1 , m2 の時、(m1 × m2)/(m1 + m2) のことです。HF の換算質量は 19/20、HCl の換算質量は 35/36 です。大して変わりません。従って、振動数の差がそのまま効いて、HF の k の方が大きいとわかります。正解は 2 or 3 です。

㋒ ですが
一次元調和振動子において、「節」は、波動関数における「エルミート多項式部分」が 0 になる所です。また、振動量子数とエルミート多項式の次数は一致します。つまり、振動量子数が ν = 5 の時、エルミート多項式部分が「5 次方程式」→ 解 が 5 つです。よって、節も 5 つ とわかります。

以上より、正解は 3 です。

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