問 題
有機合成に用いられる保護基の一般的な性質に関する記述 ㋐~㋓ のうちから妥当なもののみを全て選び出しているのはどれか。
㋐ 水酸基を t – ブチル基で保護するには、アルコールとハロゲン化 t – ブチルとの SN2 反応で
エーテル結合を生成させる。
㋑ 水酸基をトリメチルシリル基又はトリエチルシリル基で保護した場合、酸性、塩基性いずれの条件でもトリエチルシリル基の方が安定である。
㋒ ペプチドの固相合成に用いられる 9-フルオレニルメトキシカルボニル (Fmoc) 基は、酸性条
件下で安定なアミノ基の保護基で、脱保護は塩基性条件下で行う。
㋓ アニリンとインドールの窒素原子をそれぞれ p – トルエンスルホニル (Ts) 基で保護した場合、アニリンの方が穏やかな条件で脱保護できる。
1. ㋐、㋑
2. ㋐、㋒
3. ㋐、㋓
4. ㋑、㋒
5. ㋑、㋓
解 説
㋐ ですが
t – ブチルなので、まず H が抜けて安定な第3級カルボカチオンができる SN1 反応が進行すると考えられます。 SN2 ではありません。よって、㋐ は誤りです。
㋑、㋒ は妥当な記述です。
㋓ ですが
トシル基保護についての記述です。アルコールやフェノールの OH 基と反応させて、求核置換反応や脱離反応に対する反応性を促進させたり、アミンの保護基として用いられます。脱保護に関しては、アミンの保護基としてのトシル基は脱保護が難しいことが知られています。
また、インドールにおける窒素原子上の孤立電子対は芳香環を構成するため、インドールの窒素原子を保護した後の脱保護の方が、緩やかな条件で容易に進行すると推測できるのではないでしょうか。よって、㋓ は誤りです。
以上より、妥当なものは㋑、㋒です。正解は 4 です。
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