細胞の多様性と幹細胞の性質

ヒトを構成する細胞は、元は受精卵という1つの細胞ですが、発生を通じて多様な細胞に分化します。例えば細胞の大きさに注目すると、ヒトの坐骨神経細胞では1mを超すものもあったりします。

また、ヒトの全細胞数の約7割を占めるともいわれる赤血球は、血液の主成分を成す単細胞です。赤血球の特徴は核がないという点です。脱核と呼ばれます。赤血球の脱核は哺乳類に特有の現象として知られています。「核がない細胞すら、極めて身近に存在する」という点からも、細胞の多様性を実感できるのではないかと思います。

多様な細胞に分化しうる、増殖能を有する細胞が幹細胞です。幹細胞は未分化状態や由来により、大きく3つに分類されます。胚性幹(ES) 細胞、体性幹細胞、人工多能性幹(iPS)細胞です。

ES 細胞は胚由来です。あらゆる細胞に分化できます。体性幹細胞は、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉幹細胞などに分類されます。特定の組織(器官)の細胞に分化できる能力を有します。いったん分化すると原則として幹細胞には戻れないのですが、体細胞に複数の遺伝子を導入し、幹細胞の性質を持たせたものが iPS 細胞です。

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