胚発生において、部分の運命が決定していく予定運命について触れましたが、細胞レベルにおいて、特殊化した細胞になることを「細胞の分化」と呼びます。
受精卵及び直後の細胞分裂によりできる同一細胞群は、その後発生に伴い個体のあらゆる部分になりえます。これを全能性といいます。初期胚から細胞を取り出して、全能性をもったまま保存、培養したのが ES 細胞です。E は embryonic の略です。「胚性」と訳されます。S は stem の略です。「幹」と訳されます。幹細胞とは色んな細胞に分化する細胞という意味です。
ちなみに ES 細胞は胚由来であることから、倫理的問題を有し、国際的に扱いが非常に厳格です。そこで体細胞由来で、数種類の遺伝子を導入することにより、自己複製能を持ち、かつ色んな細胞に分化できるようにしたのが iPS(induced pluripotent stem:人工多能性幹) 細胞です。初の iPS 細胞は、マウスの線維芽細胞から作られました。
分化した細胞が様々な役割を担う代表的な例が免疫系です。一例をあげると、骨髄で成熟した B 細胞は、抗体産生を行います。胸腺で成熟した T 細胞は、細胞性免疫と呼ばれる異物排除のスペシャリストとして働いたり、免疫系全体の司令を出すヘルパー T 細胞として働きます。
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