医療の担い手としての倫理的責任

医療とは、憲法13条(個人の尊重)、25条(生存権)に根拠をもつ、生涯に渡っての生活の安寧を守る社会的仕組みです。医療の担い手は、国民に対し、適正医療実現の責任と義務を負います。

医療は、医療の担い手と、患者の協働により行われるものです。医療の行使において、患者には自己決定権があり、十分な説明と理解に基づく同意(インフォームドコンセント)が必要です。

医療倫理規範として代表的な3つを以下に列挙します。すなわち、ヒポクラテスの誓い、ニュルンベルグ綱領、ヘルシンキ宣言です。

ヒポクラテスの誓いは、医師の誓いとして知られています。誓いには、患者に危害を招くような措置を戒めることや患者の秘密を守ることなどが含まれています。ニュルンベルグ綱領は、ナチスの人体実験の反省に基づき、治験における暴力的、強圧的な実験の排除を訴えたものです。ヘルシンキ宣言は、臨床試験、すなわち人間を対象とする医学研究における国際倫理規範です。GCP:Good Clinical Practice (医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)もヘルシンキ宣言を踏襲しています。

薬剤師は、調剤、医薬品の供給、その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものです。(薬剤師法1条)

調剤業務は、薬剤師の独占業務であり、高い独立性と責任を伴います。例えば、守秘義務に関して薬剤師は、医師と同様に、身分法ではなく、公法である刑法に規定されています。

代表的な薬剤師の倫理に関する規範としては、日本薬剤師会による薬剤師倫理規定があります。薬剤師倫理規定には「薬剤師は、医療の担い手として、常に同僚及び他の医療関係者等と協力し、医療及び保健、福祉の向上に努め、患者の利益のため職能の最善を尽くす(5条)」 ことや 「薬剤師は常に医薬品の品質、有効性及び安全性の確保に努める。また、医薬品が適正に使用されるよう、調剤及び医薬品の供給に当たり患者等に十分な説明を行う(6条)」 さらには 「薬剤師は、地域医療向上のための施策について、常に率先してその推進に努める(7条)」
といった規定があります。

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