疾病の予防における疫学の役割

疫学とは「人間集団における疾病の分布とその発生原因を研究する科学」のことです。疾病の発生に関与している要因を明らかにすることが出来れば、ヒトをその要因から回避させることにより疾病の発生を予防することが可能になります。これはいいかえれば、疫学は疾病の発生原因の究明といった基礎科学的側面と、それに基づく疾病発生の予防という応用科学的側面の両面を持つ学問であるといえます。実際に疫学が大きな社会的役割を果たした、歴史上の実例として、代表的な例が2つあります。

1つは、ジョン・スノーのコレラに関する疫学調査です。死亡者の分布に注目することで、共同井戸に着目し、井戸の撤去を行うことで、コレラの流行を急速に収束させることに成功しました。

もう1つは、高木兼寛の脚気対策です。海軍医であった高木は、当時兵士の大きな悩みであった脚気に対し、食事が原因ではないかと考え、兵士を2群に分けて食事を検討した結果脚気問題を克服することに成功しました。

これら2つの例に共通していることは、真の原因(コレラ菌、ビタミンB1)が当時の科学技術では解明不可能であった中、疫学的な対応により事態を改善することができたという点です。

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