自己免疫疾患病態生理、治療薬、注意点

自己免疫疾患とは、自己には免疫反応を起こさない「自己寛容」が何らかの原因で破綻し、自己応答性 T 細胞により B 細胞活性化、自己抗体産生などがおき、生体に障害をおこすような疾患群のことです。代表例は、全身性エリテマトーデス(SLE)、ベーチェット病、シェーグレン症候群、抗リン脂質抗体症候群などです。

SLE は、全身性、非感染性の慢性炎症性疾患です。若年から中年女性に好発します。Ⅲ型アレルギー機序による臓器障害が生じます。全身症状として、蝶形紅斑、円板状皮疹、といった皮膚粘膜症や、変形を伴わない関節炎が高い頻度で見られます。その他、全身症状として溶血性貧血、全身性血管炎、腎障害として糸球体腎炎、胸膜炎など、個人差の大きい、種々の症状が見られます。

血清補体価低下、抗核抗体、抗二本鎖 DNA 抗体、抗 Sm 抗体、抗ヒストン抗体など、DNA に関する抗体、LE 細胞(変形した抗核抗体を好中球が貪食したもの)などが特徴的検査所見です。

プレドニゾロンや免疫抑制剤が治療薬として用いられます。関節痛には NSAIDs が用いられます。重症病態に対しては、血漿交換療法も用います。

ベーチェット病とは、慢性再発性の全身性炎症性疾患です。口粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の4つが主症状です。男女とも30代前半が発症のピークです。

眼症状に対しては、ステロイド点眼や、インフリキシマブが用いられます。皮膚症状はステロイド外用薬、関節炎にはコルヒチンが有効とされます。

シェーグレン症候群は、涙腺と唾液腺特異的自己免疫疾患です。目、口腔乾燥に加え、息切れ、発熱、関節痛などが見られます。

乾燥症状の軽快を目的に、M3 受容体刺激薬であるセビメリン(エボザック)、非選択的ムスカリン受容体刺激薬であるピロカルピンによる治療が行われます。

抗リン脂質交代群症候群は、習慣性流産、胎児死亡、動静脈血栓症、血小板減少症等をきたす疾患です。約半数が SLE に合併します。血流障害に伴う片頭痛、知能障害、意識障害、てんかんなどの中枢神経症状が見られることもあります。

血栓症の危険因子除去が重要となります。禁煙、高血圧や脂質異常症の改善、経口避妊薬の中止が必要となります。血栓症の急性期には、ウロキナーゼ、ヘパリンなどを、慢性期には再発予防として少量アスピリンなどが用いられます。

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