心臓および血管系における代表的な疾患

心臓および血管系における代表的な疾患は、先天性心疾患、後天性心疾患、心筋症、血圧異常、動脈疾患、静脈疾患、リンパ管疾患、血管痙れん性疾患に分類されます。

先天性心疾患とは、生まれてきた時に存在する心臓の疾患です。発生頻度は新生児の約1%ほどです。代表的な先天性心疾患に、動脈管開存症(PDA:patent ductus arteriosus)、心房中隔欠損症(ASD:atrial septal defect)等があります。

PDA は、肺動脈から大動脈への抜け道となっている血管である動脈管が自然に閉じずに残っている病気です。ASD は、左右の心房を隔てる部分に穴が開いた病気です。

後天性心疾患とは、生後におこった心臓病のことです。代表的な後天性心疾患に、弁膜症、心筋炎などがあります。

弁膜症とは、心臓にある弁に傷害がおき、血流の流れがおかしくなってしまう病気です。心筋炎とは、感染症などによる心筋の炎症性変化のことです。無症状のものから、発熱、呼吸困難などの症状を示すものまでさまざまな転帰をたどります。転帰とは、病気や怪我の治療の経過および結果のことです。

心筋症とは、心臓の機能に障害がおこるような、心筋の障害の総称です。代表的な心筋症に、肥大型心筋症、拡大型心筋症などがあります。

肥大型心筋症とは、心筋が肥厚することにより、心臓内腔が狭くなるような心筋症のことです。拡大型心筋症とは、心筋が変性したり脱落したりして、心臓内腔が広くなるとともに、収縮性が低下するような心筋症のことです。

血圧異常とは、高血圧、低血圧のことです。

高血圧とは、最高血圧140以上、もしくは、最低血圧90以上のことです。低血圧とは、最高血圧100未満、もしくは、最低血圧60未満です。(低血圧は、めまいなどの症状により日常生活に不自由を感じているかどうかも、低血圧であるという診断に重要なファクターとなります。)

動脈疾患とは、動脈における疾患です。代表的な動脈疾患に、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症などがあります。

大動脈瘤とは、動脈壁の一部がこぶのように膨らんだ状態のことです。放置して破裂してしまうと、激しい痛みとともに意識障害、突然死につながる疾患です。閉塞性動脈硬化症(ASO:arteriosclerosis obliterans)とは、末梢動脈において循環障害(虚血)がおきている病態の総称です。原因として高血圧、喫煙などが指摘されています。病態が進行するに伴い、始めは手足が冷えるといった症状から、最後には壊死にまで進行します。症状の進行度合いの分類は Fontaine 分類(フォンテイン分類)です。1 度が軽く、4 度が一番重い分類です。

静脈疾患とは、静脈における疾患です。代表的な静脈疾患に、下肢静脈瘤があります。

下肢静脈瘤とは、足の静脈が太く浮き出ている状態のことです。静脈弁がうまく弁としての機能を果たさなくなっており、異常血流が生じ、足が重い、足が熱いなどの症状につながります。

リンパ管疾患とは、リンパ液の量が過剰になったり、リンパ管やリンパ節が腫瘍によって閉塞したりするといった疾患の総称です。代表的なリンパ管疾患に、リンパ浮腫があります。

リンパ浮腫とは、リンパ液がたまったことによるむくみのことです。浮腫の初期の頃は、夕方ごろに手や足がむくみ、翌朝になると戻るといった症状が見られます。リンパ浮腫が進行すると、むくみがなくなったあとに皮膚が線維化して硬くなるといった症状が見られます。これはリンパ液の漏出によるタンパク質の皮膚組織への蓄積が原因と考えられています。

血管痙れん性疾患とは、血管の痙れんによる疾患の総称です。代表的な血管痙れん性疾患に、冠れん縮性狭心症があります。

冠れん縮性狭心症とは、心臓の周囲の冠動脈が痙れんをおこすことにより血流が乱れ、心臓への酸素の供給が追いつかなくなってしまうことによる狭心症のことです。安静時狭心症の大きな原因の1つとして知られています。

心臓および血管系における代表的な疾患をまとめると、以下の表になります。

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