問 題
細胞膜受容体の情報伝達系に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
- 平滑筋のGsタンパク質共役型受容体が刺激されると、小胞体からのCa2+遊離が促進される。
- 心筋のGiタンパク質共役型受容体が刺激されると、K+の細胞外流出が抑制される。
- 血管内皮細胞のアセチルコリンM3受容体が刺激されると、Gqタンパク質を介して一酸化窒素合成酵素が阻害される。
- 腎臓のナトリウム利尿ペプチド受容体が刺激されると、チロシンキナーゼの活性化による自己リン酸化が起こる。
- 脊髄のグリシン受容体が刺激されると、Cl-の透過性が亢進する。
解 説
Gs タンパク質共役型受容体が刺激されると、AC(adenylate cyclase:アデニル酸シクラーゼ)が活性化されます。AC 活性化により、細胞内 cAMP (cyclic AMP:サイクリックAMP)が増加します。よって、Ca2+ 遊離が促進されるわけではないので、選択肢 1 は誤りです。Gs ではなく、Gq タンパク質ならば、この記述は正しいです。
※※※ 2016.12.23 修正 ※※※
心筋においては G タンパク質制御 K+ チャネルがあり、これがアセチルコリンで活性化される
= 開口するチャネルであり K+ の細胞外流出が「促進」されます。これにより、心臓の徐脈を引き起こします。 よって、選択肢 2 は誤りです。
この知識は多少細かいと思うので、知らなかった場合は心筋における電位における K イオンの役割から考えるのが試験本番では、現実的であると思います。
すなわち G「i」 タンパク質共役の受容体なので「刺激されると、心臓にとって抑制的な作用」を引き起こすはずです。
「K+ が細胞外に流出」 とは細胞内をマイナスに保つことです。これは心筋細胞が「興奮しない方向の作用」です。
「K+ の細胞外流出が抑制される」と細胞内の K+ イオンが相対的に多くなります。→ 心筋細胞内の電位は、より+に偏ります。→ 興奮状態になりやすくなるといえます。
Gi タンパク質共役の受容体が刺激されて、K+ イオンの流出入に変化がおきるとすれば、興奮しない方向の作用なので「K+ の細胞外流出が促進する」 のが妥当です。「K+ の細胞外流出が抑制される」 はおかしいと判断できます。
※※※ 2016.12.23 補足終了 ※※※
M3 受容体が刺激されると、Gq タンパク質を介して NO (一酸化窒素)産生が促進されます。よって、合成酵素が阻害されるわけではないので、選択肢 3 は誤りです。
ナトリウム利尿ペプチド受容体が刺激されると、細胞内 cGMP (cyclic GMP:サイクリックGMP)の増加が見られます。この時、チロシンキナーゼの活性化による自己リン酸化はおきないので、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 はその通りの記述です。
グリシン受容体は、抑制系の受容体です。Clー の透過性が亢進することで、静止電位が下がり、興奮しづらくなります。
以上より、正解は 5 です。
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