問 題
40歳女性。身長154cm、体重54kg。造血幹細胞移植の前治療で注射用シクロホスファミド水和物をシクロホスファミド(無水物換算)として50mg/kg/dayで投与することになった。
なお、点滴静注の場合は、シクロホスファミド(無水物換算)100mgあたり5mLの注射用水を用いて溶解後、1日当たりの必要量(XmL)を量りとり、補液で希釈し用いる。
問210
シクロホスファミドの調製と投与に関して正しいのはどれか。2つ選べ。
- X=27である。
- 補液には生理食塩液を用いる。
- 大量投与する時には、出血性膀胱炎予防のためメスナ(2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム)を投与する。
- 治療効果を向上させるため、シクロホスファミド投与終了後24時間は輸液の投与を避ける。
問211
シクロホスファミド(A)は、ヒト肝ミクロソーム中のシトクロムP450(P450)によりメチレン炭素に水酸基が導入され、B、Cを経てホスホラミドマスタード(E)に代謝されたのち、最終的に活性体であるナイトロジェンマスタード(F)となる。
Step1において水酸基が導入される炭素はAの1~5のうちどれか。1つ選べ。
問212
Step3においてEとともに生じる化合物Dとして最も適切な構造はどれか。1つ選べ。
正解.
問210:2, 3
問211:5
問212:5
解 説
問210
選択肢 1 ですが
50mg/kg/day なので、54kg だから 2700mg/day です。5mL に、100mg が溶けているのだから2700mg 必要ならば、135 mL 必要です。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,3 は、正しい記述です。
ちなみにメスナは、シクロホスファミドが代謝を受けて生成される アクロレイン (出血性膀胱炎の原因とされる)に結合する等の機序により予防効果を示すと言われています。
選択肢 4 ですが
シクロホスファミドは、アルキル化剤です。架橋形成により、DNA 合成を阻害する抗がん剤です。出血性膀胱炎などの泌尿器障害が知られており、副作用軽減のためメスナという薬が併用されます。又、シクロホスファミド投与後24時間は 150 mL/時間 以上の尿量を保つように、1日 3L 以上の輸液を投与することとなっています。ちなみに、成人1回の尿量は 200 ~ 400 mL が平均です。よって、選択肢 4 は誤りです。
以上より、正解は 2,3 です。
問211
C の構造から、逆合成を考えて推測します。構造 A と C を比べると、環状構造部分が、開環しています。C の構造を少し変えてみると、下図のようになります。(関係のある、骨格のみに注目しました。)
これと A の構造を比較すれば、選択肢 5 の所に OH 基が導入されたと予測できると考えられます。
以上より、正解は 5 です。
問212
D は、アクロレインです。出血性膀胱炎の原因とされている化合物です。単純な、不飽和アルデヒドです。不飽和アルデヒドの構造を有するのは 5 です。
以上より、正解は 5 です。
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