問 題
以下の記述は日本薬局方アスピリンの定量法に関するものである。
「本品を乾燥し、その約1.5gを精密に量り、0.5mol/L水酸化ナトリウム液50mLを正確に加え、二酸化炭素吸収管(ソーダ石灰)を付けた還流冷却器を用いて10分間穏やかに煮沸する。
冷後、直ちに過量の水酸化ナトリウムを0.25mol/L硫酸で滴定する(指示薬:フェノールフタレイン試液3滴)。同様の方法で空試験を行う。
0.5mol/L水酸化ナトリウム液1mL = [ ア ]mgC9H8O4 」
定量法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、アスピリンの分子量は180.16である。
- 「精密に量る」とは、指示された数値の質量をその桁数まで量ることを意味する。
- 下線部の操作は、アスピリンの加水分解反応(けん化)を促進するために行う。
- 空試験により、空気中の二酸化炭素が0.5mol/L水酸化ナトリウム液に溶け込んだ影響を補正することができる。
- 0.25mol/L硫酸の代わりに0.5mol/L塩酸で同様の操作を行うと、[ ア ]に示した対応量は2倍になる。
- [ ア ]に入る数値は90.08である。
解 説
選択肢 1 ですが
精密に量る、と言われたら、0.1 mg , 10μg、1μg、0.1μgのどれかまで量る という意味です。量る桁が、絶対的にきまっていることがポイントです。指示された数値の質量をその桁数まで量ることは、正確に量る という表現が使われます。1.5 g を正確に量る というのは、1.45 ~ 1.54 g を量るということです。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
その通りの記述です。エステルの加水分解反応は、酸塩基中和反応よりも遅い反応です。反応を促進させるために穏やかな煮沸を行います。(実験の時に、湯せんの中で実験を行ったことがあれば、馴染み深いのではないかと思います。)よって、選択肢 2 は正しいです。
選択肢 3 ですが
その通りの記述です。より詳しく考えるならば、試料(本問では、アスピリン)以外の試薬に含まれる不純物などの影響を補正することも、目的に含まれます。よって、選択肢 3 は正しいです。
選択肢 4 ですが
最後の過剰の NaOH を中和する酸が変わっても、それまでの実験過程に変化はなく最終的に過剰に残っている NaOH の量が変わるわけではありません。つまり、対応量は変わりません。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
アスピリンの構造を考えると、COOH の部分と、エステル部分の2ヶ所が NaOH と反応することがわかります。つまり、NaOH : アスピリン は、2:1 の mol 比で反応するはずです。0.50 mol/L のNaOH は、0.25 mol/L のアスピリン つまり 180.16 × 0.25 = 45.04 が アに入る数字であると考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,3 です。
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