薬剤師国家試験 第100回 問260-261 過去問解説

 問 題     

68歳男性。骨転移のある前立腺がんと診断され、以下の薬剤が処方された。

問260

以下の記述のうち、いずれの処方薬にも該当しないのはどれか。1つ選べ。

  1. シクロオキシゲナーゼを阻害し、プロスタグランジンの生成を抑制する。
  2. アンドロゲン受容体を遮断し、前立腺がん細胞の増殖を抑制する。
  3. 黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)受容体を競合的に遮断し、ゴナドトロピンの分泌を抑制する。
  4. 下垂体の機能を抑制し、精巣からのテストステロン分泌を抑制する。
  5. 骨吸収を抑制し、高カルシウム血症を改善する。

問261

この患者への服薬に関する説明および指導の内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 処方1の薬剤を使い始めたころに、一時的に尿の出が悪くなることがあります。
  2. 処方2の薬剤使用中は、出血が止まりにくくなるので、抜歯などは控えてください。
  3. 処方3の薬剤は、痛みをやわらげたり、骨折を予防するのに有効です。
  4. 処方4の薬剤は、挿入による刺激で便意が起こることがあるので、できるだけ排便後に使用してください。

 

 

 

 

 

正解.
問260:3
問261:1, 4

 解 説     

問260

選択肢 1 は
処方 4 のジクロフェナク Na に関する記述です。

選択肢 2 は
処方 3 の ビカルタミド に関する記述です。

選択肢 3 ですが
いずれの処方薬にも該当しません。LH-RH 受容体を競合的に遮断する薬としては、デガレリクス などがあります。

選択肢 4 は
処方 1 のゴセレリンに関する記述です。

選択肢 5 は
処方 2 のゾレドロン酸に関する記述です。

以上より、正解は 3 です。

問261

選択肢 1 は、正しい選択肢です。
ゴセレリンは、LH-RH アゴニストです。一時的に男性ホルモン放出が増加するため、尿閉が強まる可能性があります。

選択肢 2 ですが
ゾレドロンは、ビスホスホネート剤です。前立腺がんの骨転移は、病的骨折などの原因となります。これらの骨関連事象の発生の抑制に加え、疼痛管理にも有効であるため使用が推奨されています。注意事項としては、腎障害、低 Ca 血症、顎骨壊死などです。

ビスホスホネート系薬剤による額骨壊死は予防が極めて重要であり、薬剤投与前に抜歯などを含め、侵襲的な歯科治療は終わらせておく必要があります。さらに、投与前から投与後も継続して歯周疾患に対する十分なケアが必要であるため、医師と歯科医師の連携が必要です。

そして、服薬指導においては、ビスホスホネート剤使用中であることを歯科医に必ず伝えるように指導しなければなりません。抜歯などを控える理由は顎骨壊死を避けるためであり出血が多いからでは、ありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
これは、処方 2 のゾレドロン酸に関する記述です。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は、その通りの記述です。

以上より、正解は 1,4 です。

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