問 題
51 歳男性。身長 173 cm、体重 81 kg。仕事で自動車を運転することがあり、排尿回数が多いため水分を控えていた。
1 ケ月前から右季肋部に違和感があったが、特に痛みもなかったため、医療機関を受診していなかった。 3 日前に妻から顔が少し黄色っぽいと言われた。
今朝、右季肋部に痛みが現れたため医療機関を受診した。血液検査で以下のような結果となり、さらにエコー検査、CT 検査等を行い胆嚢結石と診断された。
本人と医師が相談した結果、腹腔鏡下胆嚢摘出術を実施することになり、それまでの間、以下の処方 1 及び処方 2 で対応することとなり、処方箋を持って薬局を訪れた。
(検査値)
AST 62 IU/L、ALT 68 IU/L、γ-GTP 163 IU/L、アルカリホスファターゼ(ALP) 525 IU/L、直接ビリルビン 3 mg/dL
| フロプロピオン錠 80 mg | 1 回 1 錠( 1 日 3 錠) |
| 1 日 3 回 朝昼夕食後 14 日分 |
| ブチルスコポラミン臭化物錠 10 mg | 1 回 1 錠 |
| 疼痛時 5 回分 |
問222
この患者に対する薬剤師の説明内容として適切なのはどれか。 2 つ選べ。
- 処方 1 の薬剤により、胆嚢の緊張が緩み、痛みの緩和が期待される。
- 処方 1 の薬剤は、徐脈を起こすことがある。
- 処方 2 の薬剤により、食欲の抑制が期待される。
- 処方 2 の薬剤は、眼の調節障害を起こすことがある。
- 処方 2 の薬剤は、唾液分泌量の増加を起こすことがある。
問223
この患者の血液検査で、ビリルビン値に異常が認められた。担当薬剤師は、患者の状態を把握するため、ビリルビンの代謝過程を以下の図に整理して考えた。

この患者で起こっている可能性が高いのはどれか。 2 つ選べ。
- 反応 P が主に脾臓などの細網内皮系で進行している。
- 反応 Q が主に腎臓で進行している。
- 化合物 A が血液中でリポタンパク質に結合している。
- 化合物 A の血清値は正常の範囲よりも低い。
- 化合物 B の尿中への排出が増加している。
問222:1, 4
問223:1, 5
解 説
問222
胆石症の疼痛発作時にはブチルスコポラミン、フロプロピオン、NSAIDs を使用します。抗コリン薬が用いられる理由は「胆石できてどこかで詰まる → 石を出そうと消化管平滑筋 収縮 → 痛い ← 平滑筋収縮を抑えるために 抗コリン薬を使用」という流れです。
選択肢 1 は妥当です。
処方 1 フロプロピオンは胆道弛緩薬です。末梢性の COMT (カテコール – O – メチル基転移酵素) 阻害薬です。平滑筋のけいれんを和らげます。
選択肢 2 ですが
「徐脈」が重大な副作用として知られている薬の中に、名前の響きが似ているプロプラノロールがあるため、混同を意図した選択肢と考えられます。処方 1 フロプロピオンについて「徐脈を起こすことがある」と説明するのは不適切です。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
処方 2 ブチルスコポラミンは、4級アンモニウム塩である、抗コリン薬です。4級アンモニウム化することにより、血液脳関門の透過性を低め、中枢性の副作用を軽減した薬物です。胃腸など、内臓のけいれん性の痛みをとるお薬です。「食欲の抑制が期待される」薬ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
抗コリン薬の副作用の 1 つです。
選択肢 5 ですが
抗コリン薬の副作用の 1 つとして唾液分泌量の「減少」を起こすことがあります。唾液分泌量の「増加」ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 222 の正解は 1,4 です。
問223
ビリルビンは、ヘモグロビンの代謝によってできるヘムに類似した構造を持つ、黄色の色素です。ビリルビンは、間接型ビリルビンと、直接型ビリルビンに分類されます。
間接型ビリルビンは赤血球の残骸だとイメージするとよいです。直接型ビリルビンは、間接型ビリルビンが肝臓においてグルクロン酸抱合されたもののことです。間接型と直接型ビリルビンを合わせたものが、総ビリルビンと呼ばれます。
選択肢 1 は妥当です。
主に脾臓などの細網内皮系で進行する反応です。
選択肢 2 ですが
ビリルビンのグルクロン酸抱合は肝臓で進行します。「主に腎臓」ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3,4,5 ですが
図の構造における化合物 A が間接型ビリルビン、A がグルクロン酸抱合されている化合物 B が直接型ビリルビンです。
間接型ビリルビンは、血液中でアルブミンに結合して輸送されます。アルブミンは単純タンパク質です。脂質とタンパク質が結合した球状粒子であるリポタンパク質ではありません。選択肢 3 は誤りです。
閉塞性黄疸が見られる本症例の患者では、肝臓でのグルクロン酸抱合の後に排泄されず血液中に逆流して 直接型ビリルビンが高値 になります。そして、直接型ビリルビンは水溶性が高いため、血中濃度がある程度高まると尿中へ排出されます。
一方、間接型ビリルビンの血清値は変わらないと考えられます。「化合物 A 間接型ビリルビンの血清値が 正常の範囲よりも低い」わけではありません。
選択肢 4 は誤り、選択肢 5 は妥当です。
以上より、問 223 の正解は 1,5 です。

コメント