問 題
82 歳男性。身長 167 cm、体重 50 kg。 2 型糖尿病の既往があり、シタグリプチンリン酸塩錠の服用により血糖コントロールは良好であったが、歩行時にふくらはぎの痛みと足趾の冷感、皮膚色調の変化を主訴に血管外科を受診した。
下肢動脈の超音波検査及び CT 血管造影にて、重度の閉塞性動脈硬化症が確認された。
バイパス手術は積極的な適用とはならず、まずは保存的治療として、アルプロスタジル注射用(点滴静注①)による血流改善を目的とした薬物療法を入院にて行う方針となった。
また、栄養状態が悪いため、経静脈的にアミノ酸・糖・電解質・ビタミン B1 の栄養剤(点滴静注②)も投与することとなった。
点滴静注①と②の注射処方が発行されたため、処方内容に誤りや注意点がないか、担当薬剤師は確認を行った。
(入院時検査値)
空腹時血糖 110 mg/dL、血清クレアチニン 0.9 mg/dL、血圧 135/85 mmHg、eGFR 70 mL/min/1.73 m2、血清アルブミン 2.3 g/dL、Na 140 mEq/L、K 4.2 mEq/L
| 点滴静注① アルプロスタジル注射用(10 μg/バイアル 1 本) 10 μg 生理食塩液 100 mL |
1 日 1 回 10 時 2 時間かけて投与 |
| 点滴静注② アミノ酸・糖・電解質・ビタミン B1 製剤 500 mL | 1 日 1 回 10 時 2 時間かけて投与 |
問280
注射処方の確認を行った薬剤師の判断として、適切なのはどれか。 2 つ選べ。
- 点滴静注①と②は、混注しても問題ない。
- 本患者には点滴静注②の投与速度をさらに緩徐にすることを提案する。
- 本患者は糖尿病を有するため、点滴静注①は禁忌であり疑義照会する。
- 点滴静注①の投与時には、一過性の血圧低下に注意して血圧を監視する。
- 生理食塩液は配合変化を生じるため、点滴静注①の希釈液として不適である。
問281
点滴静注①には、添加剤として、精製大豆油、高度精製卵黄レシチン、オレイン酸、濃グリセリンが含まれる。本製剤に含まれている微粒子の模式図として適切なのはどれか。 1 つ選べ。ただし、外相は水とする。

問280:2, 4
問281:3
解 説
問280
選択肢 1 ですが
アルプロスタジルの注射剤は脂肪乳剤です。高濃度の電解質やアミノ酸製剤を混注すると、脂肪粒子が凝集・分離するため混注せず、別ルートまたは時間差で投与するのが妥当と考えられます。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
本患者は 82 歳と高齢であり、身長 167cm に対して体重 50 kg とやや低体重です。糖尿病の既往も考慮し、急激な糖負荷や循環血流負荷を避けるため、より緩徐に投与することを提案するのは適切です。
選択肢 3 ですが
アルプロスタジルは血管拡張作用や血小板凝集抑制作用をもち、閉塞性動脈硬化症の末梢血流改善に用いられます。糖尿病患者に対して禁忌ではありません。疑義照会不要です。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
アルプロスタジルは血管拡張作用をもつため、一過性の血圧低下に注意し、血圧を監視します。
選択肢 5 ですが
生理食塩水は、アルプロスタジルの希釈液として適当です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 280 の正解は 2,4 です。
問281
アルプロスタジルは「リピッドマイクロスフィア」により、ターゲッティングを目的とした DDS が実用化されています。リピッドマイクロスフィアとは「大豆油をレシチンで乳化」した o/w 型のエマルションである脂肪微粒子 です。大豆油がレシチンによって取り囲まれている粒子なので 選択肢 1 or 3 です。
そして、薬物であるアルプロスタジルは脂溶性なので、大豆油に薬物が溶けている 構造が妥当です。
以上より、問 281 の正解は 3 です。

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