問 題
52 歳男性。身長 167 cm、体重 56 kg。最近、右首のくぼみあたりに腫れやしこりがあり、近医を受診した。
医師の診察により、頸部リンパ節腫大を認めたため、医師は精査目的で地域医療支援病院の血液内科を紹介した。病変部位の生検の結果、ホジキンリンパ腫と診断された。
3 日後から ABVD 療法を開始する予定である。

問214
病棟カンファレンスに参加する際、この治療に関して担当薬剤師が留意する情報として、適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 処方 1 の薬剤は過剰な塩化物イオンにより分解するため、生理食塩液との混和を避けること。
- 処方 2 の薬剤の累積投与量の増加に伴い、肺機能の低下に注意すること。
- 処方 3 の薬剤は非壊死起因性抗がん剤であるため、薬液が血管外へ漏出しても投与を継続すること。
- 処方 4 の薬剤は光に不安定であり、光分解によって血管痛の原因となる物質が生じるため、点滴容器及び経路全体を遮光して投与すること。
- ABVD 療法の催吐性リスクは軽度のため、ドンペリドンの嘔気時服用で対処すること。
問215
処方 4 の薬物はプロドラッグであり、代謝物が DNA と共有結合を形成して抗腫瘍効果を示す。
以下の代謝経路に示す化合物のうち、DNA 塩基による求核置換反応を受け、薬効を示す活性本体として、最も適切なのはどれか。1 つ選べ。

- A
- B
- C
- D
- E
問214:2, 4
問215:4
解 説
問214
選択肢 1,3,5 が誤りと判断したい問題です。
選択肢 1 ですが
実習や過去問 (107-196197 https://yaku-tik.com/yakugaku/107-196/ など) で、ドキソルビシン塩酸塩を生理食塩水で溶解することを見聞きしたことがあると思われます。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
ブレオマイシンの総投与量に伴って、肺症状の発現率増加が認められています。
選択肢 3 ですが
非壊死起因性抗がん剤は、L – アスパラギナーゼや生物学的製剤が代表例です。ビンブラスチンは壊死起因性抗がん剤です。血管外漏出した際は投与中止し、点滴抜去した後に直ちに医師の対処をあおぎます。
選択肢 4 は妥当です。
遮光することで血管痛が軽減されたという報告があります。
選択肢 5 ですが
なんとなく催吐リスクが「軽度」ではないだろうと感じるのではないかと思われます。ABVD 療法において、ダカルバジンが高催吐リスクです。選択肢 5 は誤りです。
ちなみにですが
ドキソルビシンは 60 mg/m2 未満の場合は中催吐リスクに分類されています。
以上より、問 214 の正解は 2,4 です。
問215
ダカルバジンはアルキル化剤の一種です。ジアゾメタンを介してアルキル化作用により抗腫瘍効果を発現すると考えられています。ジアゾメタンの構造は D です。
以上より、問 215 の正解は 4 です。

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