問 題
心不全の治療に用いられる薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- ジゴキシンは、Na+,K+-ATPase を活性化し、心筋細胞内 Ca2+ 濃度を上昇させて、強心作用を示す。
- ピモベンダンは、サイクリック AMP (cAMP) 誘導体で、細胞内で cAMP に変換されて、強心作用を示す。
- ビソプロロールは、アドレナリン β1 受容体を遮断し、心臓のリモデリングを抑制する。
- カルペリチドは、生体内で活性体となり、ナトリウム利尿ペプチドの分解を阻害して、血管拡張作用と利尿作用を示す。
- イバブラジンは、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル (HCN チャネル) を遮断して、心拍数を減少させる。
解 説
選択肢 1 ですが
ジゴキシンはジギタリス製剤です。Na+,K+-ATPase を阻害して作用する、強心薬の一種です。Na+,K+-ATPase を「活性化」ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
ピモベンダンは、トロポニン C の Ca2+ 感受性を増大させるとともに、ホスホジエステラーゼⅢを阻害して、強心作用を示します。cAMP 誘導体ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
ビソプロロールについての記述です。
選択肢 4 ですが
カルペリチドは、心房性ナトリウム利尿ペプチド製剤です。心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP:atrial natriuretic peptide)は、血管拡張及び利尿作用を持ちます。
カルペリチドは遺伝子組換え ANP 製剤です。血管及び腎臓における ANP 受容体に作用して膜結合型グアニル酸シクラーゼを活性化します。その結果細胞内 「cGMP」 が増加し血管拡張、利尿作用が引き起こされます。「ナトリウム利尿ペプチドの分解を阻害」して作用するわけではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
イバブラジンは、心臓洞結節にある、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネルを阻害することにより、心拍数を抑える薬です。選択的洞結節抑制薬とも呼ばれます。洞結節における活動電位の立ち上がり時間を遅延させ 、心拍数を減少させる作用の薬です。
副作用として、徐脈の他に 光視症、霧視、複視などの眼症状があらわれる場合があります。視細胞において HCN1 チャネルを阻害することにより、光刺激を減衰する作用が弱まり、光に対する感受性が亢進し、光視を起こすと考えられています。
以上より、正解は 3,5 です。
参考 代表的な心不全治療薬
https://yaku-tik.com/yakugaku/yr-2-4-2/
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