問 題
71 歳女性。身長 152 cm、体重 48 kg。12 年前に 2 型糖尿病と診断されインスリン強化療法を受けた。最近は病状が安定し、経口薬でコントロールされている。
以前から血圧が低く、近年は立ちくらみもあり、不定愁訴も多い。最近 1 年間は、月 1 回通院して、処方 1 の薬剤を服用していた。前回 (1 ヶ月前) の検査値を下に示す。
(身体所見及び検査値:1ヶ月前の前回受診時)
血圧 90/64 mmHg、心拍 70 拍/分、赤血球 470 × 104/μL、白血球 4,800/μL、血小板 28×104/μL、Hb 12.1 g/dL、K 3.7 mEq/L、AST 26 IU/L、ALT 40 IU/L、γ-GTP 25 IU/L、総ビリルビン 0.9 mg/dL、CK (クレアチンキナーゼ) 23 IU/L (基準値 (女性) 20 ~ 150 IU/L)、血清アルブミン 3.5 g/dL、血清クレアチニン 1.1 mg/dL、eGFR 38.0 mL/min/1.73m2、血糖 115 mg/dL、HbA1c 6.7 %、BNP 12.0 pg/mL (基準値 118.4 pg/mL)、尿糖 (+)、尿蛋白 (+)、尿中アルブミン/クレアチニン比 150 mg/gCr、尿中ケトン体 (-)、下肢の浮腫 (±)、両側アキレス腱反射低下
問296
この患者の状態について、あてはまるのはどれか。2 つ選べ。
- ネフローゼ症候群
- 慢性腎臓病(CKD)
- 慢性心不全
- 糖尿病性神経障害
- 肝硬変
問297
前回の受診時に「夜中に足がつる」、「おなかの調子が悪い」と訴えがあり処方2が追加された。
今回の受診時に処方3が追加された。
患者から「その後、次第に筋肉痛のような痛みが持続するようになった」と訴えがあり、薬剤師は、今回の受診時の検査値を前回と比較した。
医師に処方変更を提案する内容として、適切なのはどれか。1 つ選べ。
- 酪酸菌(宮入菌)製剤を中止する。
- 芍薬甘草湯を中止する。
- シタグリプチンリン酸塩水和物を減量する。
- フロセミドを増量する。
- インスリン自己注射を追加する。
正解.
問296:2, 4
問297:2
解 説
問296
検査値から、問題文にもある低血圧に加え、低 K、低 血清アルブミン、低 eGFR、尿糖+、尿タンパク+ などを拾うと、腎機能低下傾向が読み取れます。
選択肢 1 ですが
ネフローゼ症候群とは、高度のタンパク尿により、低タンパク血症(低アルブミン血症)を来す状態の総称です。(参考 103-183 ネフローゼ症候群の病態と治療)。血清アルブミンの基準値は 3.9 g/dL 以上であり、3.5 g/dL 以下で低栄養状態、3.0 g/dL 以下でネフローゼの診断基準を満たします。本症例では、ネフローゼというほどには、アルブミン値が低くなっていません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
選択肢 3 ですが
自覚症状も特になく、慢性心不全と判断する根拠は見当たりません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
両側アキレス腱反射低下 という点に注目します。
選択肢 5 ですが
ALT,AST 値はほぼ正常であり、肝硬変ではないと考えられます。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 296 の正解は 2,4 です。
問297
足がつる → 芍薬甘草湯は、本当によくある処方です。そして、芍薬甘草湯には甘草が含まれており、副作用として、偽グリチルリチン症に注意が必要です。(参考 104-214215 50歳女性、足がつる症状に対し、市販漢方薬服用中にむくみ)。
本症例では、低 K、CK 上昇が 処方2追加の後に見られているため、副作用を疑い、芍薬甘草湯を中止すべきと考えられます。
以上より、問 297 の正解は 2 です。
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