問 題
75 歳男性。体重 67 kg。農作業中に意識を失い倒れているところを発見され救急外来へ搬送された。
痙れん性てんかん重積状態と診断され、ジアゼパム注射液 10 mg を投与したが、痙れんが持続したため、ホスフェニトインナトリウム注射液 1,500 mg が追加投与された。痙れんが改善した後、ホスフェニトインナトリウム 7.5 mg/kg/day で維持された。
経口摂取可能となったため以下の処方に変更され、7 日間服用後の患者の定常状態における平均血漿中フェニトイン濃度 (Css) は 10 μg/mL であった。
問266
追加投与されたホスフェニトインナトリウム注射液について薬剤師が医療スタッフに情報提供した内容として、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 強酸性薬剤であるため他剤と配合できません。
- 生理食塩液で希釈して投与してください。
- 静脈内に急速に投与してください。
- 血管痛や壊死が生じやすいため動脈内に投与してください。
- フェニトインの血中濃度を定期的に測定し副作用に注意してください。
問267
その後、てんかんの痙れん発作が起こったためフェニトイン散 10 % の投与量を 1 日 3.5 g (フェニトインとして 350 mg/day) に増量したところ、Css は 20 μg/mL となった。
フェニトインの代謝速度はミカエリス・メンテン (Michaelis-Menten) 式に従うものとすると、この患者におけるミカエリス定数 (Km) と最大消失速度 (Vmax) に最も近い値の組合せはどれか。1 つ選べ。
ただし、フェニトインは主に肝代謝により消失し、定常状態における消失速度は代謝速度に等しいと仮定する。また、フェニトインのバイオアベイラビリティは 100 % とし、てんかんの発作前後では Km と Vmax は変化しないものとする。
- Km (μg/mL) Vmax (mg/day)
- 2.0 330
- 2.5 360
- 2.5 390
- 4.0 420
- 4.0 460
正解.
問266:2, 5
問267:4
解 説
問266
選択肢 1 ですが
フェニトインナトリウムが 強塩基性で知られています。そのため、リン酸化しても「強酸性」にはならないのではないか、と推測し、誤りと判断するとよいと思われます。ちなみに、覚える必要ないのですが、インタビューフォームによれば、pH 8.5〜9.1 とのことです。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
選択肢 3 ですが
フェニトインといえば、代表的 TDM 対象薬です。そのため「急速投与」すると、血中濃度が急激にあがるため、避けるのではないか、と推測できるのではないでしょうか。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
血管痛や壊死が生じやすかったのは、フェニトインの注射薬です。ホスフェニトインはフェニトインのプロドラッグで、pH も 8 ~ 9 に調整され、刺激性がほとんどなく、フェニトイン注射薬の欠点が改善された製剤です。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
以上より、問 266 の正解は 2,5 です。
問267
ミカエリス・メンテン式 v = Vmax [S]/ (Km + [S]) は基礎知識です。本問では、消失速度 = 代謝速度ということなので左辺の v に フェニトインの投与量 350 (mg/day) 、[S] は、定常状態なので Css の 20 (μg/mL) を代入します。あとは、選択肢を検討すればよいです。
選択肢 1 が正解と仮定します。
すなわち、Km = 2.0、Vmax = 330 とします。以下のようになり、明らかに右辺が 330 よりも小さく、左辺の 350 と等しくはなりません。
選択肢 1 は誤りです。
以下、同様に代入していけば、選択肢 4 の Km = 4.0、Vmax = 420 の時、以下のように等式成立します。
以上より、問 267 の正解は 4 です。
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