薬剤師国家試験 第108回 問264-265 過去問解説

 問 題     

56 歳男性。体重 72 kg。5 ヶ月程前、職場の健康診断で便潜血陽性を指摘され大学病院を受診した。検査の結果、S 状結腸がん (Stage Ⅲ) と診断された。約 1 ヶ月後、S 状結腸切除術が施行された。

その後、術後補助化学療法として FOLFOX 療法 (オキサリプラチン・レボホリナートカルシウム・フルオロウラシル) を入院にて導入することとなった。

問264

FOLFOX 療法に用いる薬物又はその活性代謝物のいずれかに関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. チミジル酸合成酵素を阻害することで、DNA の合成を阻害する。
  2. ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害することで、活性型葉酸を枯渇させる。
  3. プロテアソームを活性化することで、腫瘍細胞の増殖抑制及びアポトーシス誘導を示す。
  4. ジヒドロピリミジン脱水素酵素を活性化することで、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する。
  5. フルオロデオキシウリジン一リン酸 (FdUMP) 及びチミジル酸合成酵素と複合体を形成することで、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する。

問265

FOLFOX 療法の 2 コース目の点滴時に手のしびれの訴えがあったと看護師から薬剤師に連絡があった。薬剤師が患者と面談を行ったところ、「冷たいものに触れるとビリビリとする感覚が前回からあります。また、文字を書きにくい日や、ボタンをかけにくい日が増えてきました。」とのことだった。

薬剤師は、このしびれを FOLFOX 療法の副作用と考え、症状を改善するために担当医と話し合うこととした。

このしびれの対応に関し、薬剤師が担当医へ提案する内容として、適切なのはどれか。2 つ選べ。

  1. プレガバリンの追加
  2. グラニセトロン塩酸塩の追加
  3. フルオロウラシルからパクリタキセルへの変更
  4. オキサリプラチンの減量又は休薬
  5. レボホリナートカルシウムの増量

 

 

 

 

 

正解.
問264:1, 5
問265:1, 4

 解 説     

問264

オキサリプラチンは、白金製剤です。アルキル化薬です。選択肢には記述ありません。レボホリナートは、フルオロウラシルの効果増強のための処方です。フルオロウラシルは、チミジル酸合成酵素を阻害することで、DNA 合成を阻害します。

従って、正解は 1 と 4 or 5 となります。本番では、選択肢 4,5 の2択を正確に絞るのは難しかったのではないか、という印象です。本問題を機に、レボホリナートの作用機序までおさえておきましょう。

レボホリナートの作用機序について、もう少し詳しく説明します。細胞内で還元されて5,10メチレンテトラヒドロ葉酸となる → フルオロウラシルの代謝活性物質(FdUMP)及びチミジル酸合成酵素(TS)と強固な複合体を形成する → TS の解離を遅延させ、酵素活性をより阻害する、という流れになります。

以上より、問 264 の正解は 1,5 です。

問265

シスプラチン、オキサリプラチンの代表的な副作用である末梢神経障害です。(参考 106-329 特にリスクの高い薬物とその注意点又は特徴の組合せ)。原因であるオキサリプラチンの減量又は休薬が適切な提案としてあげられます。また、神経障害なので、プレガバリンの追加も妥当と考えられます。

以上より、問 265 の正解は 1,4 です。

ちなみに
グルタチオンや、シスチン、テアニンによる効果も期待されているのですが、本試験時点では評価が定まっていません。

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