問 題
70 歳男性。体重 65 kg。ループス腎炎と脳梗塞に対して、それぞれタクロリムスカプセルとワルファリン錠を服用していた。2 週間前から微熱、咳、痰、寝汗などが続き、昨日、痰に血が混じっていたため、不安を感じて病院を受診した。
胸部 CT 検査で両側に空洞化を伴う多発性浸潤陰影を認め、喀痰の塗抹検査で病原体が検出されたため、入院し、直接服薬確認療法 (DOTS) が行われることとなった。
(入院時の検査値)
AST 26 IU/L、ALT 27 IU/L、血清クレアチニン 1.8 mg/dL、血清アルブミン 3.6 g/dL、総ビリルビン 0.7 mg/dL
問228
この患者の呼吸器症状の原因となった病原体に関する記述として正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 体内に侵入後、肺胞マクロファージ内で増殖する。
- 本病原体による感染を予防するために BCG ワクチンが用いられている。
- 蚊などの節足動物が媒介することで感染する。
- 2010 年頃から罹患率が上昇しているため新興感染症に位置付けられている。
- 近年、我が国における罹患率は、米国やドイツなどの先進国における罹患率に比べて低い。
問229
主治医より、イソニアジド錠、リファンピシンカプセル、エタンブトール錠、ピラジナミド錠の 4 剤でDOTS を開始することが薬剤師に伝えられた。
薬剤の服用にあたり、薬剤師が主治医に伝えるべき内容として、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 肝機能障害があるため、イソニアジドの使用を避けるべきである。
- ワルファリンの作用が減弱することがある。
- 視神経障害が現われることがあるため、定期的に視力等を確認する必要がある。
- 腎機能障害があるため、エタンブトールを他剤に変更すべきである。
- タクロリムスの血中濃度が上昇することがある。
正解.
問228:1, 2
問229:2, 3
解 説
問228
ループス腎炎は、SLE に合併する腎炎です。糸球体に免疫複合体が沈着することなどが原因です。SLE が自己免疫性疾患なので、免疫抑制剤使用中でした。
病院受診し、「胸部 CT で陰影」、「喀痰で病原体検出」、「DOTS」 といった用語から、結核と読み取れます。これをふまえて、選択肢に注目します。
選択肢 1,2 は妥当です。
選択肢 3 ですが
蚊などの媒介は知られていません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
「新興」ではなく「再興」感染症に位置づけられています。選択肢 4 は誤りです。(参考 衛生薬学まとめ 新興感染症、再興感染症)。
選択肢 5 ですが
日本はようやく 2021 年に、人口 10 万人対 10 を切り、結核低まん延国の仲間入りを果たしたところです。米国やドイツと比べると、まだ高い現状です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 228 の正解は 1,2 です。
問229
選択肢 1 ですが
検査値から、AST,ALT 異常なし、総ビリルビン(基準値 0.4 ~ 1.5)も異常なく、肝機能障害は読み取れません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,3 は妥当です。
リファンピシンといえば、CYP の誘導です。これにより、ワルファリンの作用減弱がありえます。また、エタンブトールといえば視神経障害なので、注意が必要です。
選択肢 4 ですが
エタンブトールの副作用といえば視神経障害なのですが、早期発見し投与中止できれば可逆的です。確かに腎炎があり、検査値としても少し血清クレアチニンが高めですが、抗結核薬は選択肢があまりないこともふまえると、他剤変更すべきではないと考えられます。
選択肢 5 ですが
リファンピシンで CYP 「誘導」なので、代謝酵素が誘導されることで、血中濃度が「低下」することがある、と考えられます。上昇ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 229 の正解は 2,3 です。
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