問 題
87 歳男性。畑仕事中に意識がもうろうとなり、A 病院に救急搬送された。現病歴と服用している薬剤の有無は不明であった。検査の結果、血清ナトリウム値が 108 mEq/L と低ナトリウム血症を認めた。
治療のため、3 % 塩化ナトリウム水溶液での点滴加療を開始することにした。処方内容や投与方法など治療方針について医師から ICU 担当薬剤師に確認の依頼があった。
A 病院の医療安全マニュアルには、生理食塩液に対する浸透圧比 4 を超える注射液を投与する場合は中心静脈より投与することと記載されている。
問198
ICU 担当薬剤師の対応に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1 つ選べ。なお、塩化ナトリウムの式量は 58.5 とし、水溶液中で完全電離しているものとする。
- 処方どおりに調製すれば、3 % 塩化ナトリウム水溶液となるため、問題なしと判断した。
- 算出された浸透圧比が 4 を超えていたので、中心静脈からの投与を依頼した。
- 低ナトリウム血症の更なる悪化は、痙れんや昏睡を起こす可能性があると情報提供した。
- 急激な血清ナトリウム値の上昇は、浸透圧性脱髄症候群を起こす可能性があると情報提供した。
- 低ナトリウム血症の原因として、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 (SIADH) も考えられると情報提供した。
問199
塩化ナトリウム水溶液におけるイオン強度や活量に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- イオン強度は、Na+ や Cl- の電荷数に依存しない。
- イオン強度が高くなると、水中の Na+ と Cl- の間の相互作用は強くなる。
- 搬送時の血清ナトリウム値と等しい Na+ 濃度の塩化ナトリウム水溶液のイオン強度は 54 mmol/L である。
- 塩化ナトリウム水溶液の活量 α は α =γ・x で表される。ただし、γ は活量係数、x はモル分率である。
- Na+、Cl- の活量をそれぞれ a+、a- とすると、塩化ナトリウム水溶液の平均活量 a± は a± = (a+・a-)/2 で表される。
正解.
問198:2
問199:2, 4
解 説
問198
選択肢 1,2 の内容が、どちらかが正しければ、どちらかが誤りである内容です。すなわち、3% になるなら、生理食塩水が 0.9%(これは基礎知識)なので、浸透圧比が4を超えません。すると、選択肢 1 が正しければ、選択肢 2 が誤りです。また、選択肢 2 が正しければ、選択肢 1 が誤りです。ここから、選択肢 1 のみの検討でよいとわかります。
選択肢 1 は妥当です。
生理食塩水、つまり 0.9% 食塩水 500mL に、10% 塩化ナトリウム 150mL を加えています。合計で 650mL の溶液となります。
食塩に注目します。
食塩水 500mL = 500g です。1% なら 5g なので、0.9% なら 4.5g の食塩が含まれます。また、10% 塩化ナトリウム 150mL には 15g 食塩が含まれます。4.5 + 15 = 19.5g の食塩が、650mL の溶液中に含まれるということです。これはちょうど 3% です。選択肢 1 が正しいので、選択肢 2 が誤りです。
以上より、問 198 の正解は 2 です。
問199
選択肢 1 ですが
イオン強度は、以下の式で表されます。(物理化学まとめ イオン強度)。
Zi が、i 番目のイオンの電荷数なので、イオン強度は電荷数に依存します。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
選択肢 3 ですが
イオン強度を計算すれば、1/2 ×(108 × 12 + 108 × 12) = 108 です。54 ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
(物理化学まとめ 活量、活量係数)。
選択肢 5 ですが
平均活量 a± = a+・a- です。1/2 が不要です。選択肢 5 は誤りです。具体例として、a+、a- が共に1とすると、平均が 0.5 になるのはおかしいと考えると、判断しやすい選択肢だったかもしれません。
以上より、正解は 2,4 です。
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