薬剤師国家試験 第107回 問306-307 過去問解説

　問 題　　　　　

60歳男性。息切れ、倦怠感が継続するため検査したところ、フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ性白血病と診断され、以下の化学療法を施行した。

担当薬剤師が患者から「手や足がピリピリとしびれ、物がつかみづらい」との訴えを受け、副作用が疑われた。

問306

この化学療法で用いられた医薬品のうち、この患者が訴えた症状を引き起こす可能性のあるのはどれか。1つ選べ。

1. シクロホスファミド
2. ダウノルビシン
3. ビンクリスチン
4. L-アスパラギナーゼ
5. プレドニゾロン

問307

その後、この患者は歩行困難となり、化学療法による副作用と疑われた。この場合の薬剤師の対応として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 副作用が疑われる医薬品の製造販売業者に副作用の可能性があることを報告した。
2. 副作用が疑われる医薬品の製造販売業者に副作用の治療費を請求した。
3. 適正に使用された医薬品は、全て副作用被害救済制度の対象になるので、申請を患者に勧めた。
4. 医薬品と副作用の因果関係が明確ではなかったが、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ報告した。
5. 副作用が疑われる医薬品について、病院のホームページにて患者情報を公開して、注意喚起を行った。

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

問306

手や足といった抹消におけるしびれなので、末梢神経障害が疑われます。末梢神経障害が知られている薬剤としては、パクリタキセル、ビンクリスチン、シスプラチンなどがあります。（103-286287）。本症例の化学療法で用いられた医薬品のうちであれば、ビンクリスチンの可能性が高いです。

以上より、問 306 の正解は 3 です。

問307

選択肢 1,4 は妥当です。
医薬関係者は、製造販売業者に報告します。製造販売業者に副作用等の報告義務があるため、医薬関係者は、副作用情報収集に関して積極的に協力します。（104-318）。

また、医薬関係者は、保健衛生上の危害発生 や 拡大防止のため、必要があると認める時は、厚生労働大臣への報告義務があります。報告窓口は PMDA となります。副作用・感染症報告制度と呼ばれます。

選択肢 2 ですが
副作用被害救済制度の仕組みにより救済されるため、製造販売業者に対して治療費を請求するわけではありません。また、請求者は薬剤師ではなく、救済給付を受けようとする者が請求します。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
「全て」ではありません。抗がん剤などは救済対象になりません。（105-321）。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。

選択肢 5 ですが
個人情報保護の観点から、明らかに不適切です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、問307 の正解は 1,4 です。