薬剤師国家試験 第107回 問169 過去問解説

 問 題     

線形薬物動態を示す薬物 A 10 mg を静脈内投与あるいは経口投与した後の血中濃度時間曲線下面積 (AUC) は、それぞれ 500ng・h/mL、150ng・h/mL であった。

経口投与後の薬物 A の消化管上皮細胞への移行率と肝抽出率を算出したところ、それぞれ 90 %と 45 %であった。また、胆汁中及び尿中に未変化体薬物は検出されなかった。

薬物 A が消化管上皮細胞での代謝を免れる率として、最も近いのはどれか。1 つ選べ。

  1. 10%
  2. 20%
  3. 30%
  4. 60%
  5. 75%

 

 

 

 

 

正解.4

 解 説     

【バイオアベイラビリティについて】
バイオアベイラビリティ(BA)とは
薬物投与量に対して、血中に薬物がどれくらい入っていくかを表す割合です。静脈注射であれば、BA は 1 です。

静脈注射で AUC が 500、経口投与で AUC が 150 なので、経口バイオアベイラビリティ(BApo)が 150/500 = 0.3 の薬物とわかります。割合を 百分率に直すとわかりやすいかもしれません。 割合 0.3 = 30% です。100mg 経口投与すると、体循環に入るのが 30mg というイメージです。

【経口バイオアベイラビリティについて】
BApo = Fa × Fg × Fh・・・(1) で表されます。(104-41)。
※Fa :消化管吸収率
※Fg :消化管における消失を免れた割合(代謝を受けるなどで消えてしまわなかった割合)
※Fh:肝臓で消失を免れた割合(肝初回通過効果を避けた割合)

問われているのは、Fg です。

消化管吸収率 Fa が
本問では「消化管上皮細胞への移行率」と表されています。Fa = 0.9 です。

肝抽出率は、言い換えると「肝臓で薬物が消失される割合」です。従って「1ーEh」が「Fh:肝臓で消失を免れた割合」です。本問では 1-0.45 = 0.55 なので、Fh = 0.55 です。

【数値計算】
式(1)に
BApo = 0.3、Fa = 0.9、Fh = 0.55 を代入すれば
0.3 = Fg × 0.495 です。選択肢から 最も近いものを選ぶと、Fg = 0.6 です。

以上より、正解は 4 です。 

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