薬剤師国家試験 第107回 問99 過去問解説

 問 題     

固定相としてオクタデシルシリル (ODS) 化シリカゲル、移動相としてアセトニトリルと水の混合液を用いて、ベンゼン、トルエン及びエチルベンゼンの分離を液体クロマトグラフィーにより行った。この分離に関する記述のうち、正しいのはどれか。1 つ選べ。

  1. エチルベンゼン、トルエン、ベンゼンの順で溶出する。
  2. 理論段高さの値が小さいカラムに変更することにより、各成分間の分離度が向上する。
  3. 移動相の流速と各成分間の分離係数は比例する。
  4. 移動相中のアセトニトリルの割合を大きくすることにより、各成分間の分離度が向上する。
  5. 固定相にシリカゲル、移動相に n – ヘキサン - アセトン混液を用いても、溶出順は変わらない。

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

クロマトグラフィーを CG と略します。固定相として、ODS 化シリカゲル、移動相として アセトニトリルと水なので、逆相 CG です。(参考 103-99)。移動相が親水性なので、親水性が高い物質ほど、パーッと流れていきます。逆に疎水性が高い物質ほど、固定相に親和性が高く、なかなか溶出しません。

ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンの3つの構造式は以下の通りです。炭素鎖が長いエチルベンゼンが最も疎水性が高い物質です。ベンゼンがこの中では、最も疎水性が小さい物質です。

選択肢 1 ですが
溶出する順は ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンです。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
理論段高さが小さい ということは、理論段数が大きい ということです。理論段数が大きいということは、優れた分離系なので、分離度が向上します。(101-4)。

選択肢 3 ですが
分離係数とは、別名 選択性です。(99-97)。2つのサンプルがある場合の保持係数の比のことです。分析対象が複数ある場合において、相対的な固定相への親和性の違いの大きさを表すパラメータです。移動相の流速とは比例しません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
水と比べればアセトニトリルの方が疎水性が大きいと考えられます。すると、アセトニトリルの割合が大きくなれば、「移動相の疎水性が上昇」します。(106-94 選択肢 4)。本問での分離対象である 3 つの物質はどれも疎水性が大きい物質であるため、移動相の疎水性が上昇すれば、物質が溶けやすく、移動しやすくなります。するとピークはぎゅっと狭い範囲に集まります。すると、分離度が低下すると考えられます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
固定相が極性が高く、移動相が疎水性が高い 順相 CG であれば、疎水性が高い物質ほど、パーっと流れていきます。従って、溶出順はエチルベンゼン、トルエン、ベンゼンの順です。逆になります。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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