薬剤師国家試験 第101回 問270-271 過去問解説

 問 題     

腫瘍内科カンファレンスにおいて、薬剤師が抗腫瘍薬の治療薬物モニタリング(TDM)に関する以下の説明を行った。

「この薬物は特定薬剤治療管理料算定が認められている抗腫瘍薬です。経口投与で用いられ、定められた最小有効トラフ濃度を超えていることをTDMによって確認することが望ましいです。」

問270

この抗腫瘍薬に該当するのはどれか。1つ選べ。

  1. イマチニブメシル酸塩
  2. ゲムシタビン塩酸塩
  3. ドキソルビシン塩酸塩
  4. ペメトレキセドナトリウム水和物
  5. メトトレキサート

問271

成人男性に対して前問の薬物を12時間毎に繰り返し経口投与するとき、定常状態における血中濃度のトラフ値が1,000ng/mLとなる1回あたりの投与量はどれか。1つ選べ。

ただし、この薬物の体内動態は線形1-コンパートメントモデルに従うものとし、100mgを単回経口投与したときの最高血中濃度は400ng/mL、血中消失半減期は12時間とする。また、本剤の吸収は速やかであり、吸収にかかる時間は無視できるものとする。

  1. 125mg
  2. 250mg
  3. 375mg
  4. 500mg
  5. 625mg

 

 

 

 

 

正解.
問270:1
問271:2

 解 説     

問270

選択肢 1 は、正しい選択肢です。
イマチニブ(グリベック)は、Bcr – Abl をターゲットとする分子標的薬です。TDM 対象薬で、トラフ値を見ます。

選択肢 2 ですが
ゲムシタビン(ジェムザール)は、DNA 鎖に取り込まれることでDNA 合成を阻害する抗がん剤です。注射剤です。経口では、ありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
ドキソルビシン(アドリアシン)は、DNA の塩基対間に挿入されて DNA 合成抑制作用を示します。副作用として、心毒性が知られています。注射剤です。経口では、ありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ペメトレキセド(アリムタ)は、複数の葉酸代謝酵素を同時に阻害することで DNA 合成を阻害します。注射剤です。経口では、ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
メトトレキサートの TDM は、大量投与時の副作用回避が目的です。一定時間ごとに、濃度が高すぎないかをチェックします。トラフ値の確認では、ありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

問271

「定常状態における最低血中濃度」は、Cssmin = D/Vd (e-ke・τ/1 - e-ke・τです。

Vd = D/C0 より、Vd = 100(mg)/400(ng/mL) です。単位に注意します。まず、400 ng/mL = 400 μg/L です。そして、mg に合わせると 400 μg/L = 0.4 mg/L です。よって、Vd = 100/0.4 = 250 (L) です。

T1/2 = ln2/ke です。 ln2 ≒ 0.7 と近似します。半減期が 12h なので、12 = 0.7/ke より、12ke = 0.7 です。※定常状態における最低血中濃度を求めるのに必要なのが「ke・τ」です。τ は、投与間隔で 12 なので、12ke = 0.7 がわかれば OK です。

以上より、式に代入します。
Cssmin = D/250 (e-0.7/1-e-0.7)。0.7 ≒ ln2 なので
e0.7  = 2 です。よって、e-0.7 = 1/2 です。

つまり 、Cssmin = D/250 (1/2 / 1/2) = D/250 です。Cssmin = 1000(ng/mL = μg/L) になればいいので、D = 250000 μg = 250mg です。

以上より、正解は 2 です。

補足
本問で「定常状態の最低血中濃度」の式がわからなかった場合は「定常状態の平均血中濃度」の式 Css=(D/τ)/CL を使って考えるとよいと思います。(こっちは、超重要で、頻出知識。正直、最低血中濃度の式は、覚えてませんでした。。)

血中濃度が 1000 なら、最高が 2000 でCssが、大体 1500 だろうと考えて計算すると、CL = ke・Vd で、大体 15 と求めることができるので、1500 = (D/12)/15 より、D ≒ 270 で一番近い選択肢として  2 を選ぶことができると思います。

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