薬剤師国家試験 第101回 問256-257 過去問解説

 問 題     

73歳男性。入院中の患者。切除不能の胃がんに対して、S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)/シスプラチン療法を開始し、その後、退院して外来化学療法で治療を継続することとなった。

問256

治療開始時又は退院時に薬剤師が患者に対して行う説明として適切でないのはどれか。1つ選べ。

  1. S-1の服用においては、休薬期間が設けられています。
  2. 治療効果を高めるために、水分の摂取量を制限してもらうことがあります。
  3. 投与期間中には、重篤な副作用を回避するため、定期的に血液検査を行う必要があります。
  4. 悪心・嘔吐、食欲不振等が起きることがあります。
  5. 激しい下痢、腹痛が起きることがあります。

問257

この化学療法の副作用を軽減する薬物に関する記述として誤っているのはどれか。1つ選べ。

  1. アザセトロンは、化学受容器引き金帯(CTZ)と求心性迷走神経終末のセロトニン5-HT3受容体を遮断し、急性の悪心・嘔吐を抑制する。
  2. タンニン酸アルブミンは、大腸のアウエルバッハ神経叢を刺激し、大腸のぜん動運動を促進する。
  3. アプレピタントは、ニューロキニンNK1受容体を遮断し、遅発性の悪心・嘔吐を抑制する。
  4. D-マンニトールは、管腔内浸透圧上昇を介して近位尿細管のナトリウム再吸収を抑制し、尿量を増加させる。
  5. レノグラスチムは、顆粒球系幹細胞に作用し、好中球数を増加させる。

 

 

 

 

 

正解.
問256:2
問257:2

 解 説     

問256

胃がんの化学療法といえば、S-1(商品名 TS-1)です。シスプラチンを加えた療法は S-1 + CDDP (SP) 療法 と呼ばれます。

SP 療法 のレジメンは、3週→2週休薬です。シスプラチンは、TS-1 内服開始から8日めに点滴で投与します。この5週間を 1 サイクル として、定期的血液検査を行い副作用をモニタリングしつつ効果が認められる限り継続します。

代表的な副作用は、下痢、嘔吐などです。激しい下痢に伴う脱水症状を避けるため十分な水分補給の必要性を説明します。「摂取量の制限」では、ありません。

以上より、正解は 2 です。

問257

さきほどの問題にあったように副作用として、下痢があります。

選択肢 2 ですが
「大腸のぜん動運動を促進する」 というのは、排便を促進する内容になっています。よって、誤りです。

ちなみに
タンニン酸アルブミンは下痢止めの薬です。腸に保護膜を作ることで刺激をやわらげて腸のぜん動運動を抑制します。アウエルバッハ神経叢を刺激しぜん動運動を促進するという記述は、センナ(アローゼン)等の便秘薬に関するものです。

以上より、正解は 2 です。

その他の選択肢はすべて正解です。がん化学療法の副作用を軽減するいわゆる支持療法に関する選択肢の内容について

語尾が「セトロン」 → CTZ、5 – HT3 遮断。「急性」嘔吐用。アプレピタント → NK1 受容体遮断。「遅発性」嘔吐抑制。は、セットで覚えておくとよいです。

また、マンニトールときたら浸透圧性利尿薬です。

最後に、レノグラスチム →「グラス」が入っている。→ G-CSF 製剤。→ 幹細胞に作用し、顆粒球分化を促進。という点をおさえておくとよいです。

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