問 題
第二次世界大戦後、四日市地域ではコンビナート(火力発電、石油精製、石油化学の工場群)が次々に操業を開始した。その後、市への悪臭の苦情及び汚染地域でのぜん息患者が増加したが、これらの現象はコンビナート操業前には認められなかった。
そのため、1961年から5年間の国民健康保険のレセプト(診療報酬明細書)をもとに、汚染地区と汚染がみられなかった地区(対照地区)の住民約3万人について、二酸化硫黄による大気汚染と地域住民の気管支ぜん息などの健康被害の調査が行われた。以下の図1~3は、その調査結果である。
この疫学調査に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- この調査は、症例対照研究である。
- 1961年の時点で、四日市市内では頻繫に酸性雨が認められていた。
- 対照地区でも気管支ぜん息の受診があったことから、二酸化硫黄が原因物質である可能性は低いと考えられる。
- 1961年以降、汚染地区で、気管支ぜん息の受診割合が対照地区に比べ多いことから、二酸化硫黄曝露と健康被害との間には関連があると考えられる。
- 二酸化硫黄濃度が高くなると、気管支ぜん息の発作回数が増加する傾向が認められる。
正解.4, 5
解 説
選択肢 1 ですが
これは、前向き研究なので、後ろ向き研究の代表例である「症例対照研究」ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
酸性雨とは、一般的に pH 5.6 以下です。図より、pH は 1961 年時点ではpH 6.0 付近と読み取れます。従って、1961 年時点で頻繁に酸性雨が認められていた とは調査から読み取れません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
受診割合に明らかな違いがあれば、原因物質である可能性は低いとはいえません。そして、対象地区では調査機関を通じて 1 % 付近であるのに対し汚染地区では、2 % 前後です。以上より、可能性が低いとは考えられません。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4,5 は、正しい選択肢です。
以上より、正解は 4,5 です。
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