問 題
53 歳男性。身長 170 cm、体重 90 kg。喫煙歴あり (15本/日) 、機会飲酒。数年前から健康診断で血圧が高いことを指摘され、本人も自覚していたが放置していた。最近、軽度のめまい感が頻発するので受診した。
来院時の血圧は 150/95 mmHg、心電図検査の胸部誘導で SV1+RV5=4.0 mV。
胸部 X 線検査で心胸郭比 (CTR) 56%。血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度、血中カテコールアミン濃度はいずれも正常、HbA1c 5.8% (NGSP値)、TG(トリグリセリド) 140mg/dL、LDL-C 160mg/dL、HDL-C 40mg/dL、尿タンパク(-)であった。
2 回目の受診時にシルニジピンとフルバスタチンによる治療が開始された。
問160
シルニジピンに関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。
- アンジオテンシンⅡ AT1 受容体を遮断して、血圧を低下させる。
- N 型 Ca2+チャネルを遮断して、交感神経終末からのノルアドレナリンの遊離を抑制する。
- L 型 Ca2+チャネルを遮断して、血管平滑筋を弛緩させる。
- アドレナリン α1 受容体を遮断して、末梢血管抵抗を低下させる。
- アドレナリン β1 受容体を遮断して、レニン分泌を抑制する。
問161
この患者の病態に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 家庭では、血圧が正常である。
- 脂質異常症による二次性高血圧である。
- 病態の改善には肥満度を下げることが推奨される。
- 病態の改善にはカリウム制限を厳密に行う必要がある。
- 心肥大がある。
正解.
問160:2, 3
問161:3, 5
解 説
問160
シルニジピンは、L/N 型カルシウム拮抗薬です。血管平滑筋の L 型 Ca2+ チャネル及び、交感神経終末の N 型 Ca2+ チャネルを遮断し、効果を示します。
選択肢 1 ですが
アンジオテンシンⅡAT1 受容体遮断薬ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,3 は妥当です。
類題 101-157
選択肢 4,5 ですが
アドレナリン受容体遮断薬ではありません。選択肢 4,5 は誤りです。
以上より、正解は 2,3 です。
問161
選択肢 1 ですが
白衣を見たり、いつもと違う環境であるために血圧が高くなっているということを示唆する情報はありません。従って、家庭では血圧が正常であるとは考えられません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
二次性高血圧とは、明確な原因があり、それによる高血圧のことです。原因疾患としては、原発性アルドステロン症や、褐色細胞腫などがあります。本問の症例患者は LDLーC がわずかに高い傾向にありますが、「脂質異常症による二次性高血圧」と判断するのは妥当ではないと考えられます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
選択肢 4 ですが
カリウム制限が必要になるのは、腎障害患者などです。高血圧ではナトリウムを控えます。また、ナトリウムの排出が期待できるため、充分なカリウム摂取が推奨されます。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
SV1+RV5 が 4.0mV で、基礎疾患としての高血圧もあり、心肥大と考えられます。ちなみに、心臓に関する検査値として他に、CTR が 50% 以上なので、心拡大があると考えられます。心肥大とは心筋が厚くなることで、心拡大とは区別されます。
以上より、正解は 3,5 です。
本番では検査値等が正確に頭に入っていることはあまり期待できず、選択肢 1,2,4 を切って正解を判断するのが妥当な解き方かと思われます。
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