薬剤師国家試験 第104回 問101 過去問解説

 問 題     

以下に示すE2反応に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 化合物Aの最も安定な立体配座はⅡである。
  2. 脱離反応はⅠの立体配座のときに進行する。
  3. 主生成物はBである。
  4. この反応はカルボカチオン中間体を経由する。
  5. この反応の速度は、化合物A及びNaOC2H5のいずれの濃度にも比例する。

 

 

 

 

 

正解.1, 5

 解 説     

(1)に関して、化合物Aのベンゼン環の置換基の中で最も大きいのはイソプロピル基です。これがaxial位(垂直方向)にあると立体反発が生じてエネルギー的に不利になります。一方、イソプロピル基がequatrial位(水平方向)にあると安定な立体配座になります。

よって、イソプロピル基がequatrial位となっているのはⅡのほうなので、(1)は正しい記述です。

(2)で、このE2反応ではHとClが脱離しています(問題文に載っている化学反応式の前後を見比べるとわかります)。

ここで、E2反応では脱離基が脱離するのと求核試薬がプロトンを引き抜くのは逆側(anti)で起こります。そのほうが、脱離基Clが外れるスペースも求核試薬がHに近づくスペースも確保しやすいためです。

よって、HとClがantiの位置関係になるためには両者がaxial位になっていないといけないので、これはⅡの立体配座のときです。両者がequatrial位のときの位置関係は、antiではなく同一平面上となり、反応が起こりません。以上から、(2)の記述は誤りとなります。

(3)について、この反応ではClとともにHが脱離しますが、Clの両隣の水素のうち、どちらが脱離するかによって生成物がBになったりCになったりします。

このどちらが主生成物になるかは、最終的に生成するアルケンが熱力学的安定性によって決まります。熱力学的に安定となるような脱離反応が優先して起こるのが原則です。

つまりは、より置換基の多いアルケンが生成すると考えれば良く、求核試薬はHの数が少ない方のHを攻撃することになります。このようなルールのことを、Saytzeff(ザイツェフ)則といいます。

この問題では、Clの付いた炭素の左下の炭素には水素が1つ、上の炭素には水素が2つ付いているので、左下の水素のほうが優先して脱離反応を起こします。よって、主生成物は化合物Cとなり、(3)の記述は誤りだと判断できます。

(4)について、カルボカチオン中間体を経由する2段階の反応は、E2反応ではなくE1反応です。今回はE2反応の話なので、脱離基の脱離と脱プロトン化が同時に起こる1段階反応となります。よって、これも誤りの記述です。

(5)は(4)と関連しますが、E2反応は脱離基の脱離と脱プロトン化が同時に起こる1段階反応なので、その反応速度が基質濃度と求核試薬濃度の両方に依存します。よって、(5)は正しい記述です。

一方でE1反応は、脱離基の脱離によってカルボカチオン中間体となり、その後、求核試薬によって脱プロトン化が起こるという2段階反応です。この場合、脱離基の脱離が始まらないと次に進めないため、その反応速度は基質濃度のみに依存することになります。


参考)有機化学 シクロヘキサンの立体配座  脱離反応(E1反応・E2反応)

 

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